蜜日〜幼なじみ5-2
そこからの自分の行動は、まるで早送りしてるかのような素早さだった。
マッハで顔を見られるものにし、髪をアップにし、歯を磨き、Tシャツと短パンに着替えて部屋を飛び出した。
階段を駆け下りて、道路に飛び出すと、キョロキョロしている隆志がすぐ目に飛び込んできた。
「お、由佳」
・・・隆志や。ホンモノの・・・
笑顔で近寄ってくる隆志は、少しまたがっちりした身体になっていた。
新しいっぽいTシャツにジーンス。スポーツバッグを肩にかけてる姿は高校の時から変わらない。
逢いたかった。
ほんまに、あたし隆志に逢いたかったんや・・・
思わず、走って飛びついた。
「うおっ」
「隆志っ・・・」
ちょっとよろけて、あたしを支えてくれる腕。匂い。
これが側に欲しかったもの。
「おいおい、公道でお前・・・朝から大胆ね」
「だって・・・」
「わかってるって。久しぶりやな、元気そうやん」
胸から顔を放して、見上げる。
「うん。隆志も」
にっこり笑いあう。
そのまま、唇が近づいた。
触れるだけのキス。
それだけで、火がつくのは当然だった。
どちらの目も潤むのを感じる。
「・・・会ってすぐって、ムードないかな」
「ええんちゃう?久しぶりやねんから・・・」
ドアにチェーンをおろすと同時に、抱きすくめられた。
「由佳・・・」
涙が、出そうだった。
隆志の声。電話越しじゃない、生の隆志の声。
「会いた・・・かった」
唇から零れる言葉と、目から零れる雫。
「アホやな。何泣いてんねん」
「浮気してへん?」
「してるか、アホ」
「大学・・・可愛い子いっぱいおる?」
「お前より可愛い子は結構おる」
「うちんとこも、あんたよりええ男いっぱいおるもん・・・」
見上げると、ニヤニヤ笑いの隆志の顔。
「浮気、する?」
「・・・心配なくせに」
「うるさい。もう黙っとけ」
そのまま口付けられると、何も考えられなくなった。
隆志が欲しくて欲しくて、気が狂いそう・・・
殆ど唇を離すことなく、いつの間にか、玄関に押し倒されひとつになっていた。
背中が痛い。
息が苦しい。
でも、今だけでも離れたくなかった。
下のほうから、水音だけが聞こえてくる。
「ん・・・あ、たか・し・・っ!」
「あ、俺、もうあかんかも・・・!」
言うが早いか、あたしの中でゴム越しに吐き出されたのがわかった。
そのまま、二人でバスルームに飛び込んだ。
ぬるいシャワーをかけ合って、じゃれる。
「ちょっと、腹出てきたんちゃうかぁ?」
「そのかわり、胸もちょっと出てるもん」
「腹出てたら、何の意味もない」
朝から玄関で抱き合って、二人でシャワー浴びるなんて、普通のあたしなら絶叫して嫌がりそうなシチュエーション。