海斗と幸代-2
「馬鹿野郎!ビチョビチョじゃねぇか!?」
「わ、ワカメ臭せぇ!」
「ヤダァ、ヌルヌルする〜!!」
朝から大騒ぎの事務所。あちこちにワカメが散乱している。そんな中、超美人でみんなのアイドル事務員、榊原知香に接近する海斗。みんなから慌てた声が飛ぶ。
「ま、まさか知香ちゃんにまで!?」
「オイ海斗!知香ちゃんは止めろ!」
そんな声など弾き飛ばすかのようにどんどん近づく。
「や、や…、か、海斗さん…止めて…」
怯える知香。しかし知香の目の前に立った海斗は袋の中に手を突っ込みニコッと笑った。
「ワカメお食べ♪」
袋から手が出た。
「キャー!」
悲鳴を上げた知香。ワカメ攻撃を覚悟し叫びながら目を閉じた。
「はい♪」
知香は恐る恐る目を開け差し出された海斗の手を見る。
「あっ…フナッシーの限定ストラップ…」
知香が前から欲しい欲しいと騒いでいた一品だった。それを見ていた全員が唖然として口をポカンと開けていた。
「遊びに行った時たまたま見つけたんだ。やるよ。」
「あ、ありがとう、海斗さん〜♪」
海斗は親指を立てて離れて行った。
「ひ、人を見やがったな〜!」
「ずる〜い!!」
結局ワカメを浴びせられなかったのは知香だけだった。そんな海斗に全員が非難を浴びせた。
「バ〜カ!!お前らと知香ちゃんは世界が違うんだよ!!下人どもは黙ってろ!おら出かけるぞ幸代!!」
激しいブーイングの中、威風堂々と出かける海斗。
「ち、ちょっと…!こんなワカメ臭いんじゃ…!」
「うるせぇ!お前の体臭に比べたら可愛いもんだろ!」
「!?わ、私体臭きつくないもん!!」
「いーから早くしろ!タラタラしてると置いてくぞ!!」
そう言って事務所を出た海斗を慌てて追いかけるワカメ臭い幸代。
「ち、ちょっと待って下さいよ!!もぅ!!」
幸代はカバンを持ち慌てて海斗を追いかけた。その様子を唖然として見つめていた社員達。
「き、強烈な台風だったな…」
安田が思わず呟いた。それからワカメ臭くなった事務所を掃除してようやく業務を再開した。
そんな中、1人だけニコニコしながら海斗にメールをしていた知香だった。