彼の居ない世界-5
何処に行ったんだろアイツ…、まぁ何となく察しは突くが、穏便に済めばいいが。でも今は夫の心配何かしてる場合ではない夕陽の光が、暗い私を照らす。
「あ、オバサーン!」
「!菫…ちゃん。」
道で買い物袋をぶら下げた菫ちゃんが声を掛け、駆け寄って来る。
「お使い?。」
「えぇ、まぁ…。」
世間話もソコソコに本題に移る。
「……ウチでは、どうしてます?」
「……菫ちゃん。」
それは、自分の大切な友人が家ではどういう様子なのかを伺ってる…。菫ちゃんはウチの娘を姉のように今まで慕ってくれている、それは今でもそう。
学校でも、あのボサボサな頭で登校して…、一緒にいた菫ちゃんだって溜まったもんじゃないだろう。
故にお互い杏の知ってる事を、情報交換し。
「……ごめんなさいね。」
「謝らないで下さい、オバサンだって。」
ホント、丁寧な子…。ウチのじゃじゃ馬娘とは大違い。
「……どうなっちゃうんでしょう、この先。」
「菫、ちゃん。」
「私は将来美容師になるつもりです。杏は女子大へ行って、そして…待ってるって……、
言ったんです…、長谷川クンが…迎えに……来る…って。」
後半から涙を流し、口調が弱まる菫ちゃん…、彼女曰く私もあの子がそう言って期待に胸含まらせていたかと思うと…。
「あの子の未来が全く解りません、いえ考えたくもありません。」
「……。」
それ以降、言葉を交わす事も無く、別れ道に到達すると。
「杏…。」
地面に視線を置き、顔を沈ませる菫ちゃん。
「ありがとうあの子の為にそこまで心配してくれて…、娘の事はおばさん達で何とかするから、貴女は自分の夢を追っかけて。」
「オバサン…。」
そう言って彼女は私にその寂しい背を向けて行った。
杏……。