キレイになってラブラブデート大作戦-7
ヒロさんに見とれる私に、天童さんがようやくヒロさんのことを紹介してくれた。
「里枝ちゃん、この子はうちのスタッフ。こんなカッコで現れてるからお察しはしてると思うけど」
いや、お察しと言われましても、純粋に素敵なご夫婦か恋人同士に見えますよ?
……あなたがオネエじゃなかったら。
天童さんがオネエなせいで、二人の関係が全くわからない。
兄妹か友達……あたりしか答えが出てこないよ。
「ご兄妹……ですか?」
この人達のプライベートを知るのは、なんだか禁断の世界に足を踏み入れてしまうような気がして、恐る恐る無難な答えを口にすると、天童さんは上機嫌になって
「正解〜、コイツはアタシの“弟”の天童弘人(てんどうひろと)28歳、独身なの! ヨ・ロ・シ・ク」
と、ウインクして見せた。
……弟?
一瞬周りの時間が止まったような気がした。
自分の耳を疑ったけど、昔から「地獄耳の里枝」の異名をとった私が、地声のデカイ天童さんの言葉を聞き間違うはずがない。
一頻り天童さんの“弟”を眺めてから、私はようやく
「えええええっ!? 男なんですかあっ!!」
と、声を張り上げた。
「……何、文句あんの?」
私の声がよっぽどうるさかったのか、ヒロさんは両耳に人差し指を突っ込んで、こちらを睨む。
だって、どう見ても――しかもかなりレベルの高い――女にしか見えないんだもん。
その失礼な仕草ですら美しくて、美術館にある彫刻みたいなほどなのに、男だなんて……。
「だ、だって、すっごく綺麗だからてっきり……」
「あのね、ロン毛の男なんていくらでもいるでしょ」
よっぽど言われ慣れてるのか、ヒロさんは腕組みしつつ眉一つ動かさずに素っ気なく言い放つ。