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ひこうき雲
【SM 官能小説】

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(その2)-4

金曜日の夕方、サラリーマンで賑わう居酒屋の片隅でイチムラと久しぶりに向かい合う。
あれ、ノリちゃんって、もう三十歳になったんだ。少し痩せたんじゃないの。恋やつれって顔
をしているけど、すごく大人っぽくなったじゃない。私はイチムラの言葉を無視したように
ウーロン茶を口にする。イチムラはビールのジョッキを片手に焼き鳥を涼しげに頬張る。

私は以前に話があったSMもののAVに出演できないか話しを持ちかける。

この業界も次々に新しい若い子が出てきて競争がけっこう激しいんだよ。ノリちゃんって、も
う三十歳だし、AVではSMもの以外は厳しいよね。今回はみんながやらないようなハードな
ものだけど大丈夫かい。イチムラは欠けた歯のあいだに焼き鳥の肉片をだらしなく挟みながら
言った。

題名は「実録 性奴隷鬼畜 その二」どこにでもありそうなタイトルなのだが、なぜその二な
のかわからなかった。

このAVって、最初のものは七年も前に発売されたけどかなり売れたんだ。すでに亡くなった
著名な小説家のK…氏が初めて監修したSMビデオで、当時はかなり話題になってね。ところ
が、最近、K…氏と交友のあったムラカミさんという人が、このAVの続編を撮りたいという
連絡があって女の子を探しているらしいのさ。

ストーリーは、主人公の未亡人がストーカーのサディストの男に監禁されSM凌辱されるとい
うごく普通のストーリーだけど、かなりハードなSMシーンが撮られているんだぜ。ムラカミ
さんはほんもののSMシーンを撮りたいらしいんだ、と言いながらイチムラはビールの残りを
一気に飲み干した。

ノリちゃんってかわいいけどわりと男っぽいから、イジメられる役って似合っているような気
がするぜ。ほんとうはMっ気なんてあるんじゃないの。笑いながらイチムラは口髭の生えた唇
に煙草を咥える。

昔から気が強そうな顔をしていた私はどちらかというとSに見られてきたが、自分ではまんざ
らMっ気がないわけじゃないなんて、ふと思いながら私に手錠をしたクノキの顔がすっと脳裏
を横切る。



次の週の金曜日の午後、とりあえず紹介するからというイチムラに連れていかれた場所は、渋
谷の裏通りにある古いオフィスの一室だった。今回のAVの監修をやってくれるムラカミさん
だよ、とイチムラが紹介した中年の男は、長い白髪を頭の背後で束ね、薄い色が入ったニヒル
なサングラスをつけていた。

思ったとおりボクのイメージには合っている。いい子だ。でも覚悟はできているよね。ボクは
本物を撮りたいんだ。きみは素直に自分を出してくれればいい。SMの経験は問わない。その
方がボクにとっては好都合なんだ、と言いながらムラカミという男は、ゆっくりと葉巻に火を
つけた。傍に立っているトオルと呼ばれた若い男が私の相手役らしい。肩まで赤い髪を伸ばし、
化粧をしたやせた男は、女みたいな腰つきとしぐさがキモイ感じのするオカマだった。


えっ、身体検査だなんて…聞いてなかったわ。

イチムラがすまなそうに私の方に目くばせする。私は頬を強ばらせながらも、しぶしぶ衣服を
脱ぎはじめる。ブラジャーとショーツも脱いでくれ。AVを撮るのにまさか裸が恥ずかしいな
んてことはないと思うがと、ムラカミという男が涼しい顔をして低い声で呟く。私はその妖し
げな彼の瞳の光に誘導されるように下着を床に脱ぎ落とした。



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