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最中の月はいつ出やる
【歴史物 官能小説】

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第四章-1

 清右衛門のもてなしで久喜万字屋へ登楼したのは深川で菓子舗「卯月庵」を営む佐之助という男だった。清右衛門とは違い痩身の佐之助は、粋な唐桟の羽織に身を包み大見世の階段を軽やかに上がっていった。
 女芸者の歌舞音曲、男芸者の可笑しげな語り・踊りで遊んだのち、佐之助は見世の主立った者に祝儀をはずみ、そうして、おもむろに月汐の座敷の奥、三つ蒲団の敷かれた部屋へ通った。
 佐之助、月汐、双方とも寝間着に着替え、蒲団の上で向かい合うと、

「月汐花魁。今宵はよろしく頼むよ」佐之助が気さくに言った。「本来であれば初会、裏を返してのち、三度目にしてようやく同衾にこぎ着けるところ、一足飛びに閨(ねや)へ通してもらい、嬉しいよ」

「佐之助さまは、竹村伊勢の主、清右衛門どのとはかなり昵懇の間柄とうかがっておりいすが……」

「ああ。幼馴染みだよ。長ずるに及び、二人とも菓子を扱う生業になったが、あたしは深川、清右衛門は吉原と、少々離れたところへ店を出しているので、商いの上でかち合うこともなく、今も仲良くさせていただいてるよ」

「仲良しどころか、清右衛門どのは佐之助さまに多大な恩義があるようで……」

「恩義? ……ああ、竹村の先代が亡くなられた時、これからの商いのしかたや仕入れ先の相談などに乗ってやったことはあったが、恩義と言われるほどでは……」

「心底困った時に差し伸べられる手は、出した本人はさりげなくとも、出されたほうは救世観音の手に思えるものでござりいす」

「さようなものかの……」

「清右衛門どのは大事なご近所さん。その方の恩人でいらっしゃる佐之助さまには、今宵、精一杯尽くさせていただきいす」

月汐は佐之助に身を寄せ、股間に身を屈める。彼女の寝間着に焚きこめた伽羅の香りが佐之助の鼻腔をくすぐり、彼は目を細める。花魁が男根を口に含むと、佐之助の目はもっと細くなる。

「いやあ。いいものだなあ……。いい香り。そして巧みな口戯。……深川の辰巳芸者はきっぷのよさが売り物だが、吉原の花魁は、しっとりしている」

追従とも本音ともつかぬ言葉を耳にしながら、月汐は雁首を丁寧に舐め、肉竿に舌を這わせ、玉袋まで口に含んで男をもてなした。そうして、一物がいきり立つと、さっそく茶臼で交接を始めた。

「んっ…………。ぬしさまのは長うござんすねえ。子宮(こつぼ)の奥にぐいぐい当たりいす」

「そうかい? ……長いと痛がる女郎(こ)もいるが、花魁は平気かの?」

「わっちのあすこは練れておりいすので、痛みなどこれっぽっちも……。むしろ、長いのは好物でござりいす」

月汐は膣襞で怒張をみっしりと押し包み、尻をゆったりと上下させる。佐之助は魔羅への刺激を楽しみながら腕を伸ばして相方の豊かな乳房を露わにさせ、揉み始める。

「ううむ……。花魁は見目麗しいが、乳もことのほか美しいのう。色白で、さすがは上上吉の傾城。眼福ここに極まれり」

「触り心地はいかがでありんす?」

「もち肌で手に吸い付くようだ。それにこの、たわわなことといったら……」

佐之助は手に乳房の重みを感じ、下腹部に尻の重みを受けていた。
 しばらくすると、月汐は身体を倒して佐之助と胸を合わせ、上から男に抱きつくようにした。

「ああぁ…………。んあぁ…………」

悦びの声が花魁の唇から漏れる。佐之助は下から腰を突き上げ、もっと月汐を乱れさせようとする。

「うっ…………あああーーーーん。……それ、その腰遣いが憎うおす。高まってまいりいす」

すこぶる容色のよい遊女が自分の腹の上で甘く悶える。これは男にとってたまらないことだった。しかも、月汐の肉壺は襞が多く、さながら八重咲きの秘肉。それが魔羅に淫靡に絡みつくので、普段はもっと長持ちするはずの佐之助が精を漏らしそうになる。

「ぬしさま。もっと突き上げておくんなんし……。ああ、そう。それでござんすようーー」

月汐にしがみつかれ、気をよくした佐之助は腰を激しく振ってしまう。百戦錬磨の蜜壺の絞め上げも喰らい、鈴口の先から白濁したものがひと噴射。ここで堪えようとするが、ひくついた魔羅はもう我慢ならずに続けて吐精してしまう。激烈な甘さが怒張に奔り、佐之助の腰が思わず二、三度跳ね上がる。

「むうーーん……」

男は低く呻いて精の残滓をトクリ……と絞り出す。それを膣奥に感じ、月汐はギューッと秘壺をさらに絞め上げ、腹部をひくつかせ、四肢を細かく震わせる。……たいがいの男は、これで花魁も気をやったと思い、したり顔になる。真に迫った身体の震えは月汐の十八番で、なかなかに他の女郎では真似の出来ない芸当であった。

 その夜、月汐の性の饗応で三度も精を放った佐之助はすっかり満足し、彼女に床花(遊女に寝床で与える祝儀)を渡し、一寝入りしてから明六ツの鐘で目覚めると、引手茶屋の若い者の迎えが来て久喜万字屋をあとにした。


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