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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館番外編〜始まり〜-1

とある時代、とある大陸の物語。
この大陸は数年前にある小国が大国になり、統一を成し遂げたばかりの不安定な状態だった。
この国はナインツ=ウェア=ハンバート二世という武勇に優れた人間の王と宰相ウェザ=ウェア=ハンバートという兄弟が治めていた。
ただ、兄弟と言っても血は繋がっていない義兄弟で、兄のウェザ=ウェア=ハンバートは獣人であった。

王宮にて………
綺麗な石作の床と細部に金細工を施した玉座、統一を祝して造らせて完成したばかりであった。
『兄上、国の様子は?』
玉座に座った王が側に控えている獣人に問う。
『なかなか良い状態だね。 統一から数年、各地に良い行政官を派遣し終えて一年、特に問題は起こっていない。
まぁ、それまでの行政官達は随分とお粗末な政治をしてたみたいだからね。
税金の30%が行き先不明になってた。』
『横領ですか………』
この兄弟はカリスマ性を備えたナインツが民衆の前に姿を見せて年長のウェザが政治を行っていた。
『そうだね、だから税率を20%も下げたって以前より10%使えるお金が増えたんだ。
民衆も大喜びだったよ。』
『兄上は凄いなぁ………私は何もやることがない………』
『いやいや、ただ税金の使い方を正しくしただけだよ。』
そういうとウェザは少し照れたように笑った。
『兄上、いつか私が死んだら国を頼みます………』
『ナインツ、そう思う位なら早く世継を作りなよ。
折角各地から選りすぐった美女を妃にしたのだから。』
『わ、私は女性は苦手なのです………』
このやりとりは会うたびに行われている。
戦場では疾風のごとき素早さと鬼のような力強さを誇るナインツだが、どうも女性に対しては奥手で貧弱だ………
『まぁ、ちゃんと構ってあげなよ。 女性を放っておくなんて失礼だ。』
『うっ………はい………』
『ホラ、もっとシャキッとしなよ♪』
私にからかわれながらナインツは逃げるように奥へ走っていった。
大陸の王と言ってもまだ21歳という若さだ………
それも、今まで戦いの日々を送ってきたため、まるで少年のよう。

王が行った後、私は自室に戻り書類の処理を始める。
新しい農地開墾、新規交易路の確保など、民からの要請を出来るだけ公平かつ迅速に叶えなければならないため大変である。
だが、私にいとも簡単で、それらを手早く捌いていく。
机に山積みになっていた書類は小一時間で全て片付いてしまった。
それ故、私は暇になってしまった。
『王兄陛下。』
兵士が一人、部屋に入ってきた。
王兄陛下、文字通り、王の兄である私についた敬称だった。
『邪教の司祭を捕えました。』
『そう、じゃあ、私も審問に参加しようかな。』
この国ではある宗教が国教とされている。
王の絶対性、王国に都合の良い宗教であったからだ。
そして、王国はそれ以外の宗教を邪教とし、信じる者を弾圧したのだった。
『イシフィア教の司祭です。』
『あぁ、まいったなぁ………』
弾圧から逃れるためには、国教に改宗をすれば良い。
大概の邪教信者は弾圧の苛烈さ故、嘘として改宗を申し出る者がいる。
だが、私としてはそれでも良いと思っている。 こちらも無駄に時間を使わなくて良いからだ。
だがイシフィア教は改宗に関しては頑固だ。
たとえどんな苦痛を与えても「死ねば神の元へ」を信じて、がんとして改宗を拒否し、最後には皆死んで行く。
現に、今までイシフィア教の信者で改宗したものはいない。 全て牢獄で死亡している。
(殺すのは好きじゃないんだけどな………)
だが、王国に反するなら私は無力な者さえ殺す覚悟だ。
(全ては王国のため、ナインツのため。)


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