デートプランを立てましょう-1
「うん、わかった」
そう頷いて微笑む端正な横顔に、私は申し訳ないと手刀を切るように、顔の前に手をピンと立てた。
私の視線の先には、ソファーに浅く腰かける義弟・天慈(てんじ)くんと、その隣で床につかない足をプラプラさせて座る、娘の瑠璃の姿がある。
その綺麗な顔で小さくウインクした天慈くんは、
「じゃあ、オレと瑠璃はその日二人でデートだな」
「デート、デート!」
と、デートの意味を理解してるのかしていないのか、無邪気にはしゃぐ瑠璃の頭を撫でていた。
輝くんとのマンネリ脱却を謀るべく、一念発起した私は、そんな仲良しの二人を眺めながら、密かに小さく頷く。
輝くんの書斎で観た、あの動画が頭から離れなくなった私は、あれからコソコソ自慰行為を繰り返すようになってしまったのだ。
あんな風に乱れたい。激しく求められたい。
輝くんと一つになりたい――。
その想いは日増しに強くなっていくものの、長いセックスレスのせいで、素直に抱いてと言えなかった。
それなのに身体は疼く一方で。
セックスレスがこんなに辛いものだなんて、今更ながらに思い知ったのだ。
打開策を考えていた私がたどり着いたのは、輝くんと二人きりでデートをしよう、という結論だった。
恋人同士だったあの時の気持ちをお互いに思い出せたら、そんな願いを込めて。
だけど、デートをするには瑠璃を誰かに預けなくてはいけない。
友達は働いていて忙しいし、私の両親も輝くんのご両親も遠方だし。
困っていた時に、たまたま輝くんの弟の天慈くんが家に遊びに来たのだ。
なんでも、バイト先のカフェで先輩が発注ミスをしてしまい、大量のケーキを捌かなくてはいけなくなったのだとか。
お金を払うとか、そう言った問題はアルバイトには降りかからなかったらしいけど、このまま廃棄にしてしまうのはもったいないから、アルバイト達に手分けして食べろとノルマを課されたらしい。
当然一人では消化できない天慈くんは、私達にお土産としてケーキを持ってきたというわけだ。