みだらな、あわだち-1
わたくし、伊集院涼子、三十二歳。某化粧品メーカーで洗顔料の開発を担当しております。
わたくしどもの洗顔料は、泡立ちの良さがモットー。界面活性剤に特殊な素材(企業秘密)を混入し、豊かで崩れにくい泡となっております。加えて、ジャスミンとイランイランの香りをミックスさせ、すてきなフレグランス。もちろん、汚れ落ちもよいですし、保湿ケアも万全なので、敏感肌の方にも安心してお使いいただけます。
……と、営業モードのわたくしでしたが、プライベートのわたくしは、はっきり申し上げて、淫乱、です。結婚はしていないので、性処理はどうしているかと申しますと、セックスフレンドを今、一人、確保しております。恋人ではありません。あくまで、性の欲望を満たすためだけの異性です。
佐藤誠。四十五歳。未婚。この、どこにでもいそうな名前の中年が、わたくしの性処理男です。見た目は十人並み、いや、はっきりいえば、ブ男の部類に入るでしょう。肝心のペニスも、平常時、長さ6センチ、幅3.5センチ。勃起時、長さ12.5センチ、幅4.2センチと、いたって凡庸です。そんな男となぜ付き合っているか……。理由はこれからお話ししましょう……。
「ただいま」
一人暮らしのわたくし、普段は帰宅の挨拶などしないのですが、性処理男が合鍵を使ってマンションに居る夜は、玄関から声をかけます。佐藤も勤め人なのですが、平均退社時間が5時50分の彼は、わたくしよりも先に部屋に居ることが多いのです。なにせ、わたくしの平均退社時間は6時30分ですから……。
「涼子さん。今夜はチャーハン作ったけど、オムライスのほうがよかった?」
料理が趣味のひとつである佐藤の言葉に、わたくしは答えます。
「チャーハンでいいけど、オイルは戸棚にある亜麻仁油を使ったでしょうね」
「うん。間違っても、健康に悪い紅花油は使わないよ」
「よーし、合格」
そして、食事を終えると、わたくしはシャワーで身体を洗い(ボディーシャンプーはもちろん弊社のものを使用)、浴槽で温まります。セックスの前には必ず入浴するのです。なぜなら、そのほうが血行がよくなり、感じやすくなりますから……。
ベッドインすると、佐藤はまず、丁寧なキスをしてきます。舌でわたくしの口腔内をくまなく刺激します。続いて、耳、首筋などに唇を這わせてきます。
そして次は、乳房の愛撫。丹念に揉み、乳首を舐め、吸います。ここまでで約二十分。行き届いた前戯でしょう? 佐藤の自己申告によりますと、女性経験は私で二人目。そんな彼がここまでペッティングが上手いのは、わたくしの手ほどきのおかげ。飲み込みが悪かったのですが、伊集院涼子の薫陶よろしきを得て、ようやく今の佐藤があるのです。
さて、AVでは、ここで女優が「お返し」とばかりフェラチオを男に施すのですが、わたくし、フェラはあまり好みません。なので、佐藤の女体への奉仕がそのまま続きます。オマ○コに手を添え、やんわりと揉みほぐします。マッサージスパでの「揉み」に匹敵するような優雅な手つき(これも、わたくしの指導の賜)。やわやわとオマ○コに圧が加えられます。それがおよそ5分続くと、
「…………あーーー」
わたくしの口から低い声が漏れます。じんわりとした快感が局部に広がってきたからです。ここで、普通の男なら、オマ○コに指を突っ込んでグチュグチュやるところですが、佐藤の手は、まだ、ゆったりと陰部全体を揉んでいます。彼の唯一の長所は気の長さ。それが、図らずも「じらし」につながり、わたくしは知らないうちに腰をせり上げているようです。
この頃には佐藤も興奮してくるようで、股間の一物は仰角を上げ、硬度が増してきます。でも、所詮は12.5センチ。ほれぼれするような見物ではありません。彼を大したものだと認めるのは、やはり、根気強さに於いてです。オマ○コをじっくり揉んだ後、「舐め」に入るのですが、この所要時間が長い長い。過去の最長記録は45分ほどでした。さて、今夜はどれくらいでしょう?
陰唇へのペロペロペロ……から始まり、レロレロレロ……になり、ビラビラを軽く咥えての奉仕になります。続いて、クリトリスを同じようにペロペロペロ……。レロレロレロ……。
「あーーーん」
陰核に鮮やかな快感が生じ、わたしは嬌声を漏らします。ここでクリトリスを強く吸われたりすると痛いような時もあるので、一度わたくしに叱られたことのある佐藤は、懇切丁寧にレロレロレロ……を続行します。続行します。続行するんです。すると、
「あっ……、だめんっ……。だめ……。だめだめだめ………………」
わたくしは否定の言葉を連呼しますが、これを英訳すると「I’m Coming」なのです。わたくしは腰をひくつかせて軽く逝きます。
クリトリスでの逝きは、快感の山は高いですが、すぐに醒めます。グラフ化しますと、急カーブを描いてピークに達するものの、すぐに減衰……。殿方の射精に於ける快感もそういう具合だと聞いたことがありますが、さて、どうなのでしょう……。
クリトリス逝きを一度味わった私は、セックスのメインディッシュともいえる性交の心構えをいたしますが、この夜の佐藤は「執着モード」がONになっていたようです。