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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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発覚1-4

「ありがとう。あのとき、あなたが見つけてくれなければ、僕は死んでいた」
 沼田の方から手をすぐに離した。もう少し握っていて欲しかった。石橋はハンカチで涙をぬぐう。
「僕の命を拾ってくれたのは、あなたです。奈津子さんが女神ならあなたは神です!」
 石橋は、ひー、とむせび泣いた。沼田が真剣な表情で石橋を見つめる。
「女神と神に逢わなければ、僕は死んでいた。でも僕は神のおかげで生きている」
 沼田は立ち上がって両手をあげた。石橋もすぐに立ち上がり同じように手をあげた。涙が止まらない。
「僕は、生きている」「僕は、生きている」二人はしばらく掛け合いで言った。石橋の感情は高揚していた。神と女神、すなわち石橋と奈津子が手を取り合ってほほえんでいる姿を想像した。こんなに幸せでいいのだろうか。
 空想の中で奈津子を抱き寄せようとしたとき、水色の前掛けをしたおばさんが入ってきた。いつもマスクがあごの下にあり、口にかけた姿を見たことがない。いったい何のためにマスクをしているのだろうと常日頃思っていた。その掃除のおばさんが、少しびっくりしたような顔で立っていた。石橋は両方の手のひらを見せて「僕たちは、生きています!」と叫んだ。掃除用具を持ったままおばさんは後ずさり、ごみ箱をひっくり返した。口を半開きにして石橋を見つめたまま、散乱した紙くずをぽいぽいとごみ箱に放り投げると、何も言わずに出て行ってしまった。閉まる寸前までドアの隙間におばさんの目があった。今の気持ちをおばさんと共有したかったので残念だった。
 沼田は椅子に座って後頭部を掻いていた。
「わかります、僕はわかりますから」
 自分でも声が震えているのが分る。感動を分かち合おうとするが、少し冷めたような沼田の表情が物足りなかった。
「とんでもねえもん見ちまったよ」
 沼田はあごを突き出しながら、持ってきたお茶のペットボトルのキャップをひねった。感動に耽っていた石橋の頭の中にクエスチョンマークが広がった。沼田はごくごくとお茶を飲んでいる。
「ふー、うめえ。のどがからからだぜ。お前の分も買ってきてやったからよ。ほれ」
 ぽいと放り投げられたペットボトルを受け取る。「すみません」と言って、キャップをひねるとプシュッと音がして大量の泡があふれた。お茶だと思ったら炭酸飲料だった。手がびしょびしょになった。沼田が指さして「げはは……」と笑っている。沼田の変貌に戸惑った。
「あのう、神の件は……」
「んなのどうでもいいよ。それはそうと、おれ田倉見たぞ、田倉」
 沼田はにやりと笑う。
「どこで見たと思う」
 細い目をした沼田の得意顔を見て少し嫌な気持ちになったが、今の感動を忘れたくない。
「女神の家だよ」
 心臓が一つ大きく鼓動した。
「金曜日あいつ休んだろう。怪しいと思ったんだよ。おれの感が働いちゃったんだよ。そしたらどんぴしゃじゃねえかよ。あの日は俺は外回りでよ、女神ちゃんの家を見張ってみたんだ。感だよ、感」
「女神……ちゃん」
「そうよ、田倉の野郎行きやがったんだ。佐伯の家によぉ」
「えー!」
 石橋は立ち上がって、両手をあげて叫んだ。ちょっとでもさっきの気分を味わおうと思ったが無理だった。
「なあ、とんでもねえだろう?」
「と、とんでもないです!」
「そこまでするかよ。人妻の家にまで上がり込んでだぞう、ずぼずぼしまくるかよ、普通。なあ、石橋ぃ」
「ず、ずぼ……し、しません、普通しませんから」
 別の意味で涙があふれてきた。
「奈津子のマ○コにどれだけ精子流し込めば気が済むんだ、やつは」
「ひー!」と悲鳴をあげ、石橋は両手で顔を覆った。
「やめて、やめてください、言わないでっ」
「ピルでも飲ませてりゃあ、あの野郎は全部中出しってことだろう。でもよ、可愛い女神ちゃんのマ○コだけじゃねえだろう。顔や腹、背中、口、それからけつの――」「ひー! すみません、すみません」石橋は沼田の言葉を遮った。これ以上聞きたくない。沼田は何か言っているが、石橋はテーブルに伏せって目をつむり、両耳の中に入れた指をせわしなく動かしていた。


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