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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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発覚1-2

「作業が早く終わってよかった。そういえば『会社へ行く前』と早合点したが、寄ってきた帰りかな」
「いいえ、先にこっちへ来ました」
 会社へ行ったのであれば休んだことがばれている。それを聞いてほっとした。今日の遅刻は何とかなるが金曜日はそうはいかない。佐伯は恥ずかしそうに頭をかいている。ともかく、ここにいる理由を考える時間ができたのはよかった。説明しなければなるまい。
「この先のマンションで、あれなんだが……」
 駅の近くの適当な十階建ての白いマンションを指さす。
「例のシークレットの件でね、こちらはわたし一人だが、ちょっと打ち合わせがあったのだ。シークレットではあるが案件自体は周知の事実だけどね。先ほど終わって、雰囲気がよい町並みなので参考のために少し奥へ入ってみたのだよ」
 説明はこんな程度でいいだろう。
「そうだったのですか、それはお疲れさまです。ベッドタウン計画は社運を賭したプロジェクトですからね。我々でさえ大変ですから部長はさぞ……」
「うん、まあそれはいいのだが、それにしてもここで君に会うとは驚いたな」
 話の腰を折った。会社をさぼっているので忙しさを言われるとこそばゆい。
 喫茶店に着くと田倉はトイレに行き、奈津子のケータイに電話した。浴室へ行くところだったらしい。危ないところだった。状況を話して対処するよう指示した。
 すました顔で席に戻ると、佐伯は資料を見せて説明し始めた。田倉は相づちを打ちながら別のことを考えていた。今頃大慌てで痕跡を消しているに違いない。ここで少し時間を稼いでおくと奈津子に言ってある。それにしても、恐ろしいタイミングで出会ったものだ。もし田倉がもっと早く出て佐伯と会わなかったら、奈津子はどうしただろう? 佐伯が一つ早い新幹線に乗ってきたら、間違いなくセックスしている最中だ。もし見つかったら……。それはそれで仕方がないのだろうな、とぼんやり考えていた。いずればれるのであれば、いっそのこと……。いやいや、そんな気分になるのはよい傾向ではない。不意に佐伯の声が耳朶に届いた。
「ああ、申し訳ない、少しぼやっとして」
 田倉は首を振った。
「大丈夫ですか? 少し疲れているように見えますが。ここずっとお忙しそうでしたから、今日は休まれたほうが」
「いや、大丈夫。もう少し詳しく説明してくれるとありがたい」
 聞いても意味のない報告だが時間を稼ぐ必要があるため、ここは真摯に聞かなくてはならない。
 こんな場所で会ってしまうとは何たる皮肉。会社を休んだことが佐伯の耳に入れば、いろいろと勘ぐるだろう。大事は小さな綻びから始まる。耳に入らないよう対策を講じる必要がある。
 他に綻びは生じていないだろうか。そうなったらそうなったで――という考えは非常に危険だということを肝に銘じる必要がある。胸の中で小さな不安が芽吹くのを感じた。


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