アイリ-1
その娘はアイリといった。驚くのはその姿だ。細身の体に身につけている衣装が非日常的なファッションなのだ。
細長い脚は白いレースのストッキングで覆われていた。パラソルのように開いた短いスカートは黒のレース模様だ。しかもギャザーがついて、ステージでこれからダンスでも踊りそうだ。
背中まで伸ばした髪の上には少し斜めに傾けたハットが乗っかっている。
「おじさん、私にとってファッションは体の一部なんだよ。普通のダサい服を着るくらいなら裸の方がまし。
もっとも裸でいるってことはカタツムリがナメクジになるってことと同じくらい変なことだから人目に晒すってことは考えられないけれどね」
その妙なカタツムリ少女は随分と時間をかけてブーツを脱いだ。きっと履くときも同じように長い時間がかかるのだろうなとそんなことを考えていた。
「この服はもう飽きてしまった。だから脱皮して違う服を身につけたいの。おじさんパトロンになってくれる? 新しい洋服に使ったお金出してくれれば、抱かせてあげるよ。但し、服を着たまま抱いて。下着一枚でも脱がしちゃ嫌。わかる?」
そんなことすれば君の大切にしている服が皺になったり汚れたりしないのか?それにパンティを脱がないでどうやってすれば良いんだ?
「この服はもう廃棄する抜け殻と同じだから汚れても皺になっても良いの。下着はちょっとずらせばできるでしょう? おじさん私にとって服は蝶の羽のようなものなの。蝶の羽をむしりとってしまえばただの芋虫と変らない。そんなの嫌だから」
カタツムリから蝶に昇格?したアイリは挑発的にポーズを取った。両手でつかめそうな細いウエストのくびれを誇示しながらアイリは言った。
「スタイルの良い子ならワンピーが似合うわ。でも私のレースファッションはそんな子でも似合わない。レースを着ると必要以上に太く見えてしまうものなの。私のように全く無駄肉のないスレンダーな体じゃないと着こなせないのよ。
どう? 抱いてみたくない? このまま抱いて服を汚しても良いわよ」
あのとき俺はそこまで迫られてどうしたんだったか? そうだアイリの言う額のお金をやって、そのまま立ち去ったんだ。確かに立ち去る俺の背中にアイリのナイフのような言葉が飛んで来た。
『意気地なし。あんたが組織員ってことは知ってるよ。だから後腐れないから誘ったのに。私も気に入らない男とは寝ないんだよ。馬鹿!』
だが今の俺はその言葉を浴びる前にアイリを抱きしめた。細い体は柔らかくしなった。そしてレースの模様の感触が触れる所すべてにあった。
「良いの? おじさん。私、案外付きまとうかもしれないよ」
俺は首を振った。つきまとっても何の意味もない。つきまとうが良いさ。
「私……定期的に服を取り替えるんだ。その度にあんたから巻き上げるよ。あんたは組織員。だから幾らでも搾り取れるものね」
俺はアイリの薄い胸をまさぐった。Aカップにさえ届かない胸はブラジャーをつけてなかった。俺は乳首の辺りを見当つけて指で摘んだ。
「あっ……いい気持。でも服を脱がさないでね。このまま服の上からペッティングして」
俺は口を近づけると服の上から乳首をしゃぶった。乳房は本当にペッタンコで,膨らみは口の中にすっぽり入るほどだった。俺は生身の女というよりファッションの妖精を抱いている気分だった。それは不思議な感触だった。一種の服装フェチのような微妙な感覚だ。