とんだ大物-7
海斗はあっけにとられて女性の顔を見つめていた。
「訳あって家に帰る事はできないの。死ぬつもりだったからこれからどうするかなんて考えてなかったし…。そんな私を助けてしまったんだから、あなたに私の未来を助けてくれる義務、あるよね?」
「はっ!?何言ってんだ、おまえ!?」
「だってそうでしょ?明日の事なんか考える必要がない私を助けたのよ?だったら助けた私が困ってるなら当然何とかするのが道義じゃない??」
「全く意味わかんねーし!?」
物凄いこじつけだ。悪びれた様子もない女性の神経を疑う。
「さっきのあなたの言葉を借りるなら、神のお告げよ。一から人生をやり直しなさい、目の前の男性と…って感じ?これは運命なのよ。こんな台風の日に釣りに来て人間を釣るだなんて普通有り得ないでしょ?」
「ま、まぁ…。」
「こんな偶然はないわ?あなたは私と出会って私を助ける運命だったのよ!どう考えてもそうでしょ?」
「う、う〜ん、そうなのかなぁ…」
言いくるめられそうな海斗。段々と女性の言う事が正論に思えて来た。
「家は?アパート??」
「いや、一軒家に独り暮らしだよ。」
「そうなんだ…。じゃあ平気じゃん。」
「平気って…」
「でもお金はないけど…、その分、家事洗濯何でもする!」
海斗はキッパリと言う。
「いや、金なんてどうでもいいんだ。」
すると女性は海斗を陥れる最強の言葉を口にした。
「夜もお世話させて貰いますから!」
「えっ!?」
爆弾発言にドキッとする。
(夜の世話って何だ??ま、まさかな…。風呂の準備とか食事とか、そうい事を言ってるんだよな…)
頭が混乱する海斗。しかしほんの少しだけ期待している下心が顔に出たようだ。女性はニコッと笑って言った。
「セックス、し放題って意味よ?」
「!?」
体をビクッとさせるぐらいに驚いた。どうして今日出会ったばかりの美人がそんな事を言ってくるのが信じられない。
(罠だ…。何かの罠だ!おれは誰かに騙されようと…)
そんな海斗の気持ちを読んだのだろうか。女性は顔を寄せて来て言った。
「罠とかじゃないからね?崖から飛び降りてあなたに出会うなんて、そんな命懸けの罠、ないでしょ?」
「ハハハ…そ、それもそうだね…」
海斗は女性に振り回される。しかし最終的には下心が物を言う。海から引き上げた時に触った胸は相当なものだ。そして北川景子似の超美人。こんな美人との甘い生活を想像すると、少しぐらい騙されてもいいかな…、そんな気になってしまった。海斗は決めた。
「わ、わかったよ!俺が責任をとっておまえの面倒を見てやるわ!来いよ!家に!」
女性は両手を上げて喜んだ。
「やったー!!ありがとう!!」
そう言って抱き着いてきた女性の胸の感触にある一部の体温をすっかり取り戻した海斗であった。
こうして奇妙な出会いから一緒に暮らす事になる2人の長く切ない物語が始まるのであった。