とんだ大物-5
女性の顔はすっかりと人間らしさを取り戻していた。お化けでなければ女子供にも容赦ない海斗。しっかりと応戦する。
「で、釣れたの!?」
「釣れなかったよ、今日はな!」
「釣れる訳ないでしょ!?こんな台風の中!子供でも分かるわよ!」
「ガキには分かんねーよ!俺ぐらいのレベルになると不可能を可能にする力があるんだよ!」
「へ〜!凄い可能性ね!結果人間一人でしょ?マジ凄い。」
「何を!?ワカメも釣ったぜ、一応!」
「ワカメ!?それ、引っかかっただけでしょうが!?皆に自慢出来るわね〜!台風の中、一日釣りしてワカメと人間釣りましたってさ!神だわ〜。」
完全にぶち切れた海斗。
「この野郎!!もう怒ったぞ!?」
海斗は女性の胸ぐらを掴み歩き出す。
「な、何すんのよ!?」
「テメーのお望み通り海に返してやるよ!!今度はちゃんと死んでこい!」
「な、離してよ!!」
「うるせー!!」
海斗は波が激しくうねる海に向かう。
「きゃー!人殺し!!」
「うるせー!うるせー!」
足が海水に浸かる。
「うら!」
海斗は海に向かって女性を投げ飛ばした。
「きゃあ!!ゴボゴボ…、死んじゃう…!」
「おまえ、死にてぇんだろうが!」
「死ぬ〜!」
「死にてぇのか死にたくないのか分かんねぇ女だな!」
波に体を弄ばれる女性。波の隙間から微かに声が聞こえた。
「たす…けて…」
と。海斗は溜息をつき、
「ちっ、しょうがねぇな…」
と言って女性の体を抱きかかえ海から上がった。
「まだ死にたいか!?」
凄む海斗だが、女性はガタガタ震えながら虫の鳴くような声で言った。
「寒いよぅ…」
すっかりしおらしくなってしまった女性。あまりのギャップに海斗の良心が少し痛む。
「しょうがねぇな。車に行くぞ。」
海斗は道具を担ぎ女性のカラダを支えながら車へと向かった。