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夜羽球の会
【調教 官能小説】

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入会-2

◆◆◆

「さぁ、それじゃあタツミ君、改めて彼女と挨拶をしておいで」
「はい」
 そう言うと先輩たちが道を開けてくれたが、女の先輩はもう立ち上がっていて、ゆっくりとタツミの前まで歩いてきた。
「いえ、私の方が序列が下なので、私から挨拶させていただきます」
 女の人の口からその言葉が出た瞬間、夢のような話が現実であったことを確信してタツミは心臓が跳ね上がりそうだった。高校時代は男子校でむさくるしい毎日を送ってきたタツミの前で、美人の女の先輩がタツミに敬語を使っているのだ。それだけでもう、タツミは脳が弾けるような感覚を味わっていた。

「私、薬学部3年生の金沢佑香里といいます。あの、序列が下に決まったので、何でも言うことはお聞きしますので、これからよろしくお願いします」
 佑香里と名乗った先輩がペコリと頭を下げた。
「おいおい佑香里、序列が上の人に挨拶するんだから、もっとちゃんとしないとダメなんじゃないのー」
 確か2年生だと言っていた先輩が横から声をかけた。それを聞いて、佑香里は少し戸惑った顔をしたが、すぐに「ごめんなさい」と返事をすると、その場にラケットを置いて正座し、三つ指をついてタツミの方を見上げてきた。

 タツミはもう全身に鳥肌がたっていた。本当にこんなことがあるのだ。学年が上の者に対して、バドミントンの力でもって言うことを聞かせ、三つ指をついて挨拶をさせているのだ。長年すさまじい妄想を繰り広げてきた童貞にとって、これほど夢の溢れる玩具はあり得ない。何かとんでもないことが起きている気がして、タツミは現実感をなくしながら感動に酔いしれていた。

「ほら、タツミ君も自己紹介したら?」
「あ、そうですね。えと、それじゃあ、僕は小林巽っていいます……」
「タツミ君が敬語なのは変だよぉ」
 先輩に指摘された。本当は年上に話すのだから敬語で然るべきなのだが、ここでは道理が違うのだ。郷に入りては郷に従えというべきなのかいまいちよく分からないが、タツミは思い切って、後輩に接するように話しかけることにした。
「俺は小林巽だ、よろしく」
「小林、タツミさんですね。よろしくお願いします」
 そう言うと、佑香里は深々と頭を下げた。生まれてこの方、タツミは人に土下座をされることなど経験がなかった。
 それにしても、こっぱずかしい感じはあるものの、佑香里の平伏した姿を見ているとどこか気分が爽快である。男から見れば小さな体をさらに小さく折りたたみ、地面に額をべったりつけている。運動をして少し汗ばんだ身体が妙に色っぽい。タツミの心の奥底から、長年の妄想生活でたぎらせてきた情動が、生来の嗜虐性を伴ってふつふつと湧きあがってくる。

「あの、本当に何をしてもいいんですか……」
 佑香里を見下ろしたまま、会長に問う。おそらくこれが最後の確認である。この返事を肯定してもらえると、タツミは思い切って理性を切り捨てて、この歪んだ会の世界に飛び込んでいこうと考えていた。そして、会長は期待を裏切るわけもなく、嬉しそうに返事をした。
「あぁ、当然だ。タツミ君は試合で勝ったんだから。なぁ、佑香里、そうだよな」
「はい、タツミさんは私よりも序列が上なので、何をしていただいても構いません……」
 他の先輩たちとは違う、高くて澄んだ声が答える。
 もう引き返せないな。そう冷静に自分でツッコミを入れて、タツミは口の端をクイと引き上げた。

「ぁぅ……」
「おおぉ」
 佑香里のうめくような小さな声と、先輩たちの野太い歓声がした。
「タツミ君、キミはなかなかサドなんだな。いきなり佑香里の頭を踏みつけるとは、いやいや、これは期待の若手だなぁ」
 会長が大きく笑った。
「いや、だって本人が何してもいいって言うもんですから。序列を明確にするためにも、まぁ挨拶代わりにね」
 先輩の方を向くことなく、タツミは佑香里の後頭部を見下ろしたまま会話をする。
 少し楽しくなって、つい足に力を入れてぐりぐりと踏みつけてしまう。それを見て、再び会長は大きく声を上げて笑った。
「ははははは、いや、大物だなこれは。楽しみな新入生が入会してくれたもんだ、嬉しいな」
 そして、会長はぐるりと他の会員たちを見回すと、
「どうだ、今日はもうタツミ君の好きにさせてあげて、僕らは居酒屋で新入生獲得の祝杯でも上げに行かないか」
「いいですねぇ、先輩。そうしましょう」
 他の会員たちも乗り気で答えると、みんなぞろぞろと荷物も持って出口へと向かっていった。
 最後に会長が扉を閉めて退場していくまで、タツミは何も言わずじっとその様子を見つめていた。

 先輩たちが全員出て行って、体育館が急に物静かになる。逆にその沈黙感が、この現実離れした現実を後押ししてくれるようで、タツミには少し心地よかった。
 あとは好きにしてくれ。その言葉が、実に心の中でタツミの大胆さを押し上げていた。今まで妄想してきたあんなことやこんなこと、それを何でも実践できる環境が整ってしまった。あとはもう、タツミの大胆さがそろえば妄想が具現化する状況になってしまったのだ。

 何度見ても目を疑うようだ。タツミはもう一度、本当にこれが現実であることを確かめるように、佑香里の後頭部をグリグリと踏みにじってみた。





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