12.花客に曝け出した散美-8
「このハメかただと、ぶちこまれてるとこもクリトリスも丸見えだぜ? 悠花ちゃんよぉ?」
スプリングを活かした腰の動きを寸断なく続けて、常に悠花は串刺しにされたまま体を揺らめかせる。声に出して結合の様子を伝え知らされ、それを意識すればするほどに恥辱に塗れた妖しい悦楽に全身をあますところなく包み込まれていた。
あますところなく、そう思っていた。
(また、来るっ……)
竜二の亀頭が入口付近まで引かれて、すぐ後に訪れるであろう花園への衝撃に、もはや否定できない期待を夢うつつの中で待っていたところへ、突如まったく異なる感覚が身にもたらされた。
「おいっ!」
押し黙っていた筈のバゼットの声がした。異変の詳細を把握する前に、
「えっ……! な、えっ……!」
と、異物感を信じがたい場所に感じた。体の全てを支配されてしまった、という感傷は思い込みでしか無かった。竜二の男茎に翻弄されるあまり、背後に迫っていた健介の気配に気づいていなかった。何か細く硬い物が押し当てられた場所は、竜二に貫かれている場所のすぐ後ろ、漏らしてしまった愛液で周囲をヌメらせている菊門だった。
「やっ……! ちょっ!! 何っ!?」
「ほら、じっとしろよっ」
身を硬くして腰を捩らせようとしたところへ、パンッ、とまた音が鳴るほど竜二の腰が打ち付けられると悠花の体は痙攣をして動けなくなった。異物に引き締めていた力が緩んだところへ、腹筋で起き上がった竜二が腰にあった手を更に背後に回して、引き締まった悠花のヒップを両側へ広げると、無防備になった細い何物かが悠花の菊門をくぐって中に入り込んできた。
「いやあっ!!」
膝に力を入れて立ち上がろうとする悠花の体は、前から竜二にお尻を、後ろから肩を健介に抑えられ身動きすることができなかった。痛みはないが、拒絶する括約筋を押し広げるように直腸まで差し込まれると、初めての場所に異物を挿入される苦しさで胸を喘がせる。
「ほらほら、セックス、セックス。休んでる場合じゃないぜ?」
身を起こして正面から悠花の体を抱いた竜二が、寝転がっていた時よりずっと激越に出し入れをしてくる。
「あんっ……、あ、抜いて……、やっ……」
前から送り込まれる快楽と後ろに訪れた恐怖の板挟みにあいながら、後ろの健介を振り向こうとするが、その姿を視界に入れることはできなかった。
「こっちも犯してやるんだからよ、中キレイにしとかねぇとな」
そして悠花の見えない所から、健介の無慙な声が聞こえてくると同時に、差し込まれた異物の先からよく分からない液体が直腸に流入してきた。
「ひゃっ……、がっ……、おっ……」
僅かに注入されるだけで、いつもの排泄の場所に冷たい感覚が広がる。何をされているか、されようとしているか悠花にはもう分かっていた。医療行為を含めても、これまで生きてきてソレを経験した覚えはなかった。
健介はたっぷり薬液を充填したシリンダを手に、先端から繋がるチューブの先が繋がっている悠花の後姿を内心上気しながら眺めていた。健介にとっても悠花ほどの女を抱いたことはなかった。世の中の男は誰だって悠花を目の前にしたら抱きたいと思うだろう。だが責務として何人もの女を抱かされてきた健介にとって、自ら抱きたいと思う相手には、ただ抱くのでは飽き足らない想念を持っていた。これまで何人もの男が瀬尾悠花を抱いてきただろう。自分も竜二のように犯せば同等の快楽を得られるに違いない。だが、他の男が押し入った同じ場所を侵すよりも、まだ誰にも許していない、誰にだって許すわけがない場所を征服するほうがずっと大きな快楽が得られるに違いなかった。村本とのセックスを捉えた盗撮映像の中で、稀々映り込む悠花の小口に誰にも貶められていない神聖なる醇美さを感じ、そこの初めての侵掠者となることを欲していたのだ。
薬液が広がる初めての感覚から悠花が回復しそうな頃合で、もう一度シリンダが押された。
「うああっ……、や、やめて……」
竜二のピストンに上体を揺らめかせながら、これまでの性交では意識したことのない後ろの器官に流れこんでくる冷涼に背筋が凄然とする。
「ぎゃははっ、ハメられながら浣腸されちゃってるぜぇ? どおしよぉなぁ? 悠花ちゃんよぉ〜」
悠花が菊門を犯され始めている姿は、竜二の好虐心も煽ってきて、悠花の内部で男茎がビクビク脈打ち幹に纏う真珠が蠢く。
「お願い、やめて……」
涙を睫毛に溜めて正面の竜二に訴える悠花の表情を、残虐さ丸出しの貌で迎えながら、
「浣腸が嫌ならよぉ? 中出ししちゃっていい?」
「……んっ」悠花は唇を噛んで一瞬ためらうが、そのまま小さく頷き、「いい、……いいから、抜いて……」
悠花は即座に、「背に腹は変えられぬ」を具現したような妥協を直ぐに決めて、竜二の申し出を受けた。