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フライング・スタリオン
【その他 官能小説】

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フライング・スタリオン-1

1.
 石崎昇は、癌放射線治療の専門医として、シドニーにクリニックを開いている。
 日本と現地の医療関係者との交流を深める活動にも力を注いでおり、日本の病院で看護婦長をしている洋子のオーストラリア研修を、医療コーディネーターとして1ヶ月の間、英語のできない洋子のサポートをした。

 早く親と別れて独身生活を続けてきた洋子には、石崎の親切は身にしみて嬉しかった。
 普段は、若い看護婦を相手にキリキリと神経を逆立て、強気で突っ張っている洋子であったが、一人ぼっちの海外研修と言う心細い環境では、頼るものが欲しかった。石崎はそんな洋子が、心を許して甘える事の出来る雰囲気を持っていた。
 押し付けがましいところはないが、必要な時はいつも側にいた。側にいるだけで、心が和んだ。

 一月足らずの研修が終わって帰国をする時、石崎は空港まで自分の車で送った。
 別れの握手をすると、洋子の胸は津波の様に揺れた。生ぬるい液体が、涙腺から鼻に流れた。
「帰りたくないわ」
「え、なに?」
「いえ、あのぅ、お世話になりました」
「又、いつでもいらっしゃい」

 昇の手が解けると、洋子の手のひらにすっと冷えた空気がしのび込む。
 いつも側にいたのに、初めて握る力強い、男の手が、やんわりと洋子の手を包む。優しい。

 洋子には、いつの間にか昇に好意以上の感情が芽生えていた。昇の態度にも、親切以上のものを感じていた。
(でも、昇さんには奥さんがいる。今は施設に入っていると聞いたけど)

(帰りたくないわ)
 このままここにいれば、昇との間に何かが起きる。この胸のときめきは、どんどん増幅して、そしていつの日か、・・・そんな予感がした。
(結婚できなくても、愛してさえ呉れれば)
「さようなら」
「じゃあ、元気でね」


2. 
 石崎昇の妻は、重度の若年性認知症に犯され、24時間介護の施設に入って1年が経つ。
 毎週、和食の弁当を持って見舞いに訪れているが、もう、夫を見分けることもできない。
「健やかな時も、病める時も・・・」、昇は、最後まで看取る覚悟を決めているが、困ることが一つあった。

 名ばかりの夫婦で、すでに夫婦生活が失われて2年近くが経つ。日ごと夜毎、溜まり続ける精液の処理である。初めは、お決まりのオナニーで誤魔化していたが、あまりにも味気ない。
 化繊綿の入ったベッド用のフカフカ枕を加工して、ダッチワイフを手作りした。
 本物には及ばないが、そこそこの用は達している。

 オナペットは、時によりお好みの相手を選ぶ。今は、研修で来ていた洋子が相手だ。2ショットで取った写真を枕元において、欲情するとことに及ぶ。
(あの子はいい子だ。妻に万一の時は、あの子が来てくれればなあ)

 モデルにしてもおかしくないプロポーション。日本女性としては背が高い。一般向きではないが、大柄な女性は僕の好みだ。セックスレスで慢性的に欲求不満な僕の要求に、あの体なら十分に答えてくれるだろう。



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