私がついてるよ…-5
頭がズキズキする
昨夜の事はよく覚えていない、それほど自分でも吃驚するくらい荒れていたのだろう。
ただ彼女を呼び出し、思いっきり甘えたのだけは覚えている。
気が付けばもう朝、時計の針は6を刺している。
故にアナウンスも足音も聞こえてこない。
「……」
静まり返った病室
僕は心の穴がポッカリと開き、彼女が居ない事に気付く。
「杏?…」
そう呼ぶも返事は無い。きっと帰ったんだ、そりゃそうだあんな時間あんな天気にで
呼び出すと言う非常識な行為を行ったんだ。彼女が僕を大事にしてくれる想いを他所に
罪悪感に満ち溢れていた。
それか昨夜の彼女は幻だったのか?
そう思考を巡らせていると、突然。
「うわぁっ!♪グッモーニング泣き虫ボーイ!」
「!!?」
横から突然毛布から顔を出す杏。
どうやらあの晩彼女もあのままベットで眠りについたらしい。つまりアレは幻でも無く
増して迷惑掛けられて怒って帰った訳でもなかったと言う訳だ。
眩しい笑顔を晒す彼女、僕はそんな彼女を再び愛おしく感じ、想いっきり抱き締めた。
「っ!絆…」
「僕は、やっぱり君が好きだ!」
窓から今日と言う一日を知らせる日差しが差し込む。
僕等はそれに視線を置き、ゆっくりと口を開ける。
「今日も…僕は生きていられた…」
「絆…」
ポツリと漏れた言葉、事実とは言え口にするものではないのだが。
正直夜が恐い、いや正式には眠りに就くのが恐ろしい。そのまま永眠となるのでは…
そう想うと。
「あーホラ見てっ!あそこに水族館が見えるよ!」
元気がなく、心配した彼女が勇気づけようと窓のほうへ歩み寄り、その建物を指差す
「ゴメン、こんな事言うつもり、なかったんだけど…」
「絆…」
彼女を心配させるような言葉を口にした事を詫び、そして。
「旅行、行こっか…」
「えっ?」
僕の突然の提案に目を見開く彼女。
「でも…」
「大丈夫、先生を何とか説得してみせる、大丈夫、心臓病たって別にこの前の大怪我
みたいに体が不自由な訳じゃない」
「絆…」
行こうよ、杏…
最期……の、デートに。
次回、14話へ続く。