な-7
「そっか」
そう言ってゆっくりと椅子から立ち上がってスーツを着替えに行った。
パタンとしまった部屋のドアが、あたしを拒絶しているようで寂しい。
お互いに何か気まずい雰囲気であまりしゃべらないままに
夕飯を食べて、リビングから逃げるようにお風呂に入った。
あたしが、今日と明日の外ごはんを断ったから機嫌が悪いのかな?
お風呂から出て「駿ちゃん。お先に」と部屋を覗いた時も
駿ちゃんは忙しそうに仕事をしていた。
「ん」
ただそれだけをいうとそのまま仕事を続けたので
あたしはそっとドアを閉めた。
あたしは。何でも上手に出来る夢ちゃんとは違う。
コンプレックスに思った時期もあったけど。
今はあたしはあたしで良いんだと思ってる。
頑張ったところで、お母さんや夢ちゃんのように、仕事大好きな人にはなれない。
仕事が出来て。
何でもはっきりと物をいう夢ちゃんが好きな駿ちゃん。
そんな駿ちゃんを好きなあたし。
あたしは、いつまでたっても駿ちゃんに好きになってはもらえない。
もう何年も分かり切っていた事だから。
今更涙なんか出ないけど。
それでも。
「夢ごめん」
そう言ってそっとあたしにキスをする駿ちゃんを
今日も待ってしまうあたしは・・・・
バカなんだろう―――