妖怪艶義〜お菊虫〜-6
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そのまま、力尽きるように倒れ伏した俺を尻目に、彼女は何事もなかったように押入れへと向かう。
ナイキのマークみたいに腹を持ち上げているのは、搾った精をこぼさない様にするためだろう。
布団にうつ伏したまま、こちらを振り向きもせず去っていく彼女を、俺は見送る。
押入れの襖を器用に脚で閉め、それきり、彼女の気配は立ち消えてしまった。
いつもの、事後の風景だ。
俺は仰向けに寝転がって、侘しい灯(あかり)を見上げる。
彼女にとって、俺は食餌でしかないはずなのに。
俺は、与えられる悦楽に酔っているだけかもしれないのに。
それなのに、彼女と‘肌’を重ねるたび、心に湧き上がる思いは何なのだろう。
あんな、人外の少女に対して。俺は気でも触れてしまったのだろうか。
まぁ、いい。
また明日になれば、彼女がやって来る。
この先、どうなろうとも。
今は、それでいいかもしれない。