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妖怪艶義〜お菊虫〜
【フェチ/マニア 官能小説】

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妖怪艶義〜お菊虫〜-1

1
‘彼女’は最近、俺の部屋の押入れに居着くようになった。
もっとも彼女がいるのは下の段で、布団を入れている上とは違ってデッドスペースだし、ちょっとした好奇心で昼間のぞいてみても、どこかに出かけているのか蛻(もぬけ)の殻だから、日常生活には何の支障もない。彼女が俺に干渉してくるのは、毎晩寝る前の小一時間だけだ。

・・・今夜もそろそろ時間だ。俺は布団を敷いて、その上に横たわる。
今からする事を考えて、掛け布団は被らず、服も身に着けず仰向けに寝転がるのが、最近の習慣だ。
彼女は毎晩現れるが、結構気まぐれで時間はまちまちだから、目を瞑って待つことにする。仮に寝てしまっても、彼女が起こしてくれるだろう。

・・・どれくらい時間が経っただろう。閉じた瞼の向こうで、ぎちぎちぎちと不思議な音がする。これが、彼女の足音だ。足音は、押入れから俺の方へゆっくりと近づいてくる。

肌にちくりと、刺すような痛みがひろがる。彼女の脚は針金の様に細くて、鋭い爪もあるから、結構痛い。これでも、注意してくれているみたいだけど。

目を開けると、市松人形くらいの大きさの、彼女の顔が目の前にあった。髪型はおかっぱというか、緑色の兜状の甲殻が、頭を覆っている。昆虫の様な複眼で、その眼の色は窺い知れないけれど、柔らかく笑んだ口元には俺への好意が見てとれる。

彼女は小型犬くらいの大きさで、人間の顔の下に、キリギリスの身体がついている。


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