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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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僕だって!-3

「わぁー素敵♪まるで本物みたぁーい!」

暫く空けてたケド、伊藤サン達のお陰で前と何も変わり無く、絆の席もちゃんと残してあり、暖かい温もりで包まれる、彼の美術室。

今、私の目に蒼色を惜しみなく画用紙に太い筆で走らせ、その上に薄く軽く乗せた白色から見える、広大な青空を頭にイメージさせる風景水彩画が映り。

その絵を瞳を輝かせ覗く私、でも絆は「今日はヤケに元気だね」とでも言わん表情で、私を見つめ。

「本当に売らなくて良いの?」
「何言ってんの!売る訳無いでしょ!」

昨日、絆が部室に顔を出し、加藤君から聞いた話で。
彼が飛び降り自殺する前、熱心に筆を走らせ完成させた絵。それをたまにやってくる顧問の先生が見て「素晴しい!」と歓喜の声を挙げ、次のコンクールに出したらと勧められ、
作者不在故にその判断を代わりに加藤君が勝手に決め、出す、と答えてしまい。
 そのコンクールで彼の絵を大変気に入った人が居て、是非買い取って欲しいと志願してきたのだが…。

「それで?どうして売らないの?お金になるんだよ、普通自分が創った物が気に入られ、よそ様に渡ってったら嬉しい筈よ部長。」
「…子供見たいな物だよ。何時間も、時には大きな壁にぶつかり一から描き直し、やっと
自分の想い描く絵が完成して。それがどっかの議員だか何だか知らないケド、普段から
 態度も悪くて、僕の絵より遥かに高そうな家具を屋敷に買い揃えているような人の手に
渡る何て、手塩に掛け我が子のように大事な絵を、そんな軽い気持ちでお金何かに代わる
何て、想像しただけでも…」

真剣な眼差しで語る彼、そこから絆がどれだけ絵に対して深い情熱を抱いているかを伺える。

「まぁかなりの値段で買い取ってくれるらしいですけど、嫌なら。」
「全くだよ、幾らその時入院してたからって人の作品を勝手にあげないようにね」
「す、スミマセン!」

口調も物腰柔らかく優しい彼にしては激しい。もはや手放す事は有り得ないだろう。
 何だかちょっぴりカッコいいな。


「分かったよ、じゃー別の子誘ってアイスをナメナメしてくるわ」
「うん、ゴメンね最近、ゆっくりペロペロしてきてね」

相変わらず友との他愛も無いやり取り、この日も菫に罪悪感を感じつつ後ろ髪を引っ張らられるように、背を向け別れる。

私だって本当は一緒に菫とアイスを食べたい、でも、そんな事をすれば彼女にまで危害が
及ぶ危険性が…。

アスファルトに視線を落としつつ、気分が沈んでいると。

「!!」

突然、背筋がゾゾーとし全身が凍りつく。
 得体の知れない不気味な視線が背中を容赦なく突き刺す。

またアイツだ…

恐る恐る振り向くが、そこには誰も居ない。
 しかしかすかに走り去る足音を耳にする。

私は顔を強ばらせ、その逃げ去ったであろう建物の角に視線を置く。

あぁ、恐い

誰か助けて…






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