恋路 〜プロローグ〜-1
――――――――――――昔話をしよう。時は戦国、応仁の乱も終わり各地では群雄が割拠し、思い思いにその武力を奮っていた。そんな時代に武士への立身を夢見る一人の農民がいた。―――木下藤吉郎―――。彼は織田信長の家来になると羽柴秀吉と名を改め、元来よりの賢さで側近まで成り上がった。本能寺の変が起こるといち早く明智光秀を討ち取り、遂に天下人となったのだ。その功績として朝廷から「豊臣」性と関白の位を貰った。秀吉の死後、政権は徳川氏の手に委ねられたがそれでも尚、豊臣家の力はゆるぎないものだった。東の徳川、西の豊臣。1600年、2つの勢力は関ヶ原で衝突し、青年豊臣秀頼を担いで指揮を取っていた石田光成の討ち死によって戦いに終止符が討たれた。豊臣方の将はことごとく処刑され、その手は遂に大将秀頼にまで差し向けられた。秀頼は自害し彼の一族は農村に逃げ延び農民に成り下がった。そんな中一人だけ逃げ遅れた少年がいた。―――豊臣将史―――秀頼の長男であった。彼は徹底抗戦を主張し秀頼の自害後も最期まで戦い抜いた。彼は捕えられ、江戸と目と鼻の先の千葉への流罪となった。そんな彼も5年後には最期を迎えた。享年24才、早過ぎる死であった。徳川が刺客を差し向けたのだ。そんななか将史の最期を泣く泣く見届けた女性がいた。―お雪―
信長の孫にあたる少女で、本能寺の変のとき千葉まで逃げ延びた母と村人との間に生まれた娘である。お雪は将史の世話をしているうちに愛が芽生えた。しかし将史には徳川より贈られた形だけの妻、お秋がいてお腹には息子もいた。そして愛し合ったお雪と将史の二人が体を合わせることもなく、将史は殺された。徳川家はこれで豊臣が滅びたと勘違いした、お秋の息子を見落としていたのだ。その後お雪も他の男も結婚して娘を産んだ。こうして戦国の世の悲しい恋のお話しは終わりをとげる。
――――――――――――時は平成、秀吉の末裔で将史の子孫である木下将を廻る、400年の時を越えた恋愛の戦いが始まる。
〜プロローグ完 つづく〜