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ボールと家族とワールドカップ
【家族 その他小説】

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忘れた物を取りに-2

「いいよ、その調子、その調子」

50回出来たら、同僚を急かしてやろう。いい加減なあいつの事だ、まだ知り合いに聞いて無いに違いない。

「21、22、23、24、25…」

「あと、半分!」

今度はちゃんと自分の事だと言って、紹介して貰おう。あっ、しまっ!

「わっ!っぶなかったあ、大丈夫、大丈夫、そう、慌てないで落ち着いて、集中、集中」

「31、32、33、34、35…」

30年以上も昔、あの時、スパイクを求めるためにもっと足掻けば良かったな。変なプライドを棄て、何故先輩たちに頼んで譲って貰えなかったのか。何故泣き叫んで両親にねだらなかったのか。

後悔が残る。しかし、もう遥か昔のことだ。30年を経た今、少し足掻いて冴えない人生を少しでも変えようと思う。

「あと、10回よ」

人の応援だけでは無く、自分の事でも喜び、自分の事でも悔しがることも覚えるんだ。

「凄い凄い!41、42、43…」

そう、あの時に忘れた物を取り戻しに行く。

「47、48、49」

数を数える知美の声が上ずっていた。

「あと1回!」

麻衣の声が興奮でひっくり返った。

49回目の時、私は頭を超える高さまでボールを蹴り上げた。

そして、落ちてくるボールを見定め、インステップを使って右足を思いっきり振り抜いた。

「50―――!」

バシッ!と唸ったボールは無回転で飛び、20mほど先にあるバックネットにガシャっと当たって跳ね返った。

私にはそれがゴールネットを揺らしたように見えた。



2014年7月14日 ブラジル リオデジャネイロ マラカナンスタジアム
2014FIFA ワールドカップブラジル大会決勝戦。ドイツ対アルゼンチン戦
前後半戦は0対0で決着が付かず、延長戦後半8分、ドイツのアンドレ・シュールレHが入れたクロスを、途中出場のマリオ・ゲッテェRが胸トラップから左足でシュートを決めた。それが決勝点となりドイツが4回目のワールドカップを手にした。

優勝:ドイツ
準優勝:アルゼンチン
ゴールデンボール(MVP):リオネル・メッシI(アルゼンチン)
ゴールデングローブ(最優秀GK):マヌエイ・ロイヤー@(ドイツ)
ゴールデンブーツ(得点王:6得点):ハメス・ロドリゲスI(コロンビア)


おしまい。


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