試合結果と共に-7
その日の夜、公園のグランド。練習を始める前に、気になっていた事を麻衣に聞いた。
「なあ、どうしてサッカー始めたんだ?やっぱり、なでしこがワールドカップで優勝したからか?」
「失礼ね。お父さんみたいに、にわかサッカーファンじゃないよ」
「じゃあ、どうして」
「本当はもっと早くやりたかったけど、中学の時にクラブが無かったのよ。バレー部には仕方なく入っただけ」
「そうなんですよ、麻衣ったらレギュラーのクセに、こっそり隠れてリフティングの練習してたんですよ。それもバレーボールで。それでこんなに差がついたなんて、狡いと思いません?」
「知美も練習したらよかったじゃない」
「あたしは真面目なのよ」
初耳だった。
「だけど、サッカーに興味惹く物なんて、家に無かったじゃないか」
どうして麻衣がそこまでサッカーに惹かれたのかがわからなかった。
「小学校の授業の時にね、自分はサッカーが得意なのかなって思ったの。ドリブルなんて上手かったんだよ。でも所詮は小学校の授業ね。上手い人はもっと上手い」
麻衣の言葉は途中から聞いて無かった。私は何だかとても可笑しくなり、声を出して笑い出していた。
「くくく、小学校だって、くはははは、ドリブル上手かったって、くっくっ、ははははは」
「何笑ってるのよ!変なお父さんね」
突然笑い出した私に、麻衣は気を悪くしたようだ。でも笑いは止まらなかった。
「もう!恥ずかしいから止めてよ!」
変なお父さんか…
麻衣は間違いなくその変なお父さんの血を引いている。そして私には無い世渡りが上手なところは母親似だな。そう思うと益々可笑しくなってきた。
翌朝の準決勝戦。オランダ対アルゼンチン戦。
メッシが囲まれ、ロッペンも同様に得意の突破は中々見られなかった。
前日の王国崩壊の試合と違って、緊迫した試合が続き、お互い少ないチャンスをものにできないまま、30分の延長戦を経ても決着は付かなかった。
PK対決の結果、4対2でアルゼンチンが120分の死闘を制した。
4日後の決勝戦はドイツ対アルゼンチン、ヨーロッパ対南米の好カードとなった。