試合結果と共に-4
その日の夜、緑地公園のグランドには2人が揃って待っていた。
「寝たか?」
私は気になっていた事を麻衣に尋ねた。
「うん。でも授業中じゃないよ。昼休みに少しね。お父さんは」
「ああ、しっかりサボって車の中で寝たよ」
「駄目じゃない。お母さんに言うよ」
昨日とは違う2人のやり取りに、知美は目を丸くした。
準備運動をし、昨日と同じようにワンバンドでの練習を始めた。昨日と違うのは麻衣が私の状況をじっと見ていた事だ。やり辛かったが文句は言えない。
「間に2、3回ノーバンで蹴るのを入れてみて」
麻衣の言葉を受けて、2度ノーバンで上手く蹴れたがが、3回目にボールが前に転がってしまった。
「足首が安定してないよ。いつも地面と平行になるようにしてみて」
できる者は簡単に言うが、中年の体にそれが中々上手くいかない。少しでもコントロールを失いそうになると、慌ててしまった体は更に言う事を効かなくなった。
ぽつぽつと麻衣から助言が出てきたから、こちらからも疑問点を聞いてみる事にした。
「甲で蹴る時、インステップのどこで蹴ればいいんだ?」
「どこって、どういうこと」
私の言っている意味がわからないみたいだった。
「シュートを打つ時はこの甲の硬いところで打つだろ。でもリフティングの時もそこでいいのかな?」
昔は感覚的にできていた事も、今では理論付けをしないとできなかった。
麻衣は首を捻りながら、手にしたボールを足の甲に落として弾ませた。
2、3回ボールを受けた感覚を確かめてから、麻衣は首を傾げた。
「う〜ん、リフティングの時は、少し指に近いところで蹴ってるのかな。わかんないけど」
麻衣が言った通り、少し指の近くで蹴ると、今度はボールが回転をするようになった。
「指を立てたまま蹴るから回転するのよ」
指を立てないように修正した。頭には色々な情報が入るが、固まった体ではそれを用いて制御はできない。
跳ねたボールが麻衣の方に飛び出した。麻衣はそのボールを見事にトラップして、直ぐ様こちらに蹴り返した。
「とにかく回数ね。あたしもそうしたんだから」
仰る通り。とにかくこの日は、回転が掛らないように真上に蹴り上げる事を心がけた。