はめ殺し-5
「奥さん、あんたが背中を流してくれないかな?」
「そそ、そんな……」
瑞江はしどろもどろになり、下を向いた。
「背中を流すだけでいいんだ。べつに、妙なことになったりはしないよ」
「妙なこと?」
「いやらしいことには発展しないってことだよ」
瑞江は赤面した。
「流してくれませんかね、背中。自分では手が回らない……」
「じゃ……。じゃあ、流し……、流しましょうか……」
「ほんと? 助かるねえ。お願いするよ」
浮浪者は笑い、振り向いて洗い場の腰掛けに座った。瑞江は下を向いたままだった。
「早くしてちょうだいよ。このままでは湯冷めするかも」
促され、瑞江はスリッパは脱いだが、気が動転していたせいか靴下を履いたままバスルームへ足を踏み入れた。
夫以外の男の裸を見るのは久しぶりだった。結婚する前に一人いるにはいたが……。
「じゃあ、頼むぜ」
垢すりを手渡され、広い背中を目の前にして片膝を付いた。バスルームの狭い洗い場に男の体臭が立ちこめてい る。瑞江は浴槽から洗い桶に湯を汲むと、男の背中にかけた。そして、おもむろに垢を擦り始めた。でも、あまり垢は出ない。何日も風呂に 入っていないはずなのに……。
「あの……、一度浴槽に入って、身体をじゅうぶん温めてくれませんか? そのほうが垢が出やすいので……」
「お? そうか? ……それもそうだな」
背中にもう一度湯をかけられてから、男は立ち上がった。振り向いて浴槽に入る瞬間、弛緩したペニスがブルンと 重たげに揺れるのを目にして、瑞江は心臓がトクリと高鳴った。
湯船に入って温まっている間、浮浪者は、じっと瑞江の身体を眺め回していた。気詰まりな彼女は、ボディシャ ンプーを取り上げ、香りが良いとか、肌にいいとか説明し始めた。他にも、風呂場の床が滑りにくい素材であるとか、どうでもいいことを口に していた。
温まった男が浴槽から上がり、再び瑞江が垢を擦ってみると、今度は古い皮膚がポロポロ落ちた。背中を流し終 え、垢すりを浮浪者に手渡そうとすると、彼はこう言った。
「奥さん。ついでだから前も擦ってくれないか?」
有無を言わせず身体の向きを変え、胸を突き出す。その下にやや弛んだ腹があり、さらにその下、股間には、凄い 存在感の亀頭を付けた一物が垂れ下がっていた。
(いやらしいことには発展しないって言ってたのに……)
躊躇する瑞江だったが、男は根気よく促した。そして、とうとう垢すりを持った彼女の手が浮浪者の厚い胸に伸び た。擦ると、そこからも垢がたくさん落ち、腹からも落ちた。そうして、太腿も擦っていると、ふと、腕に何かが当たった。見ると、それは半 勃ちしているペニスだった。