サツキ-1
俺はスーパーショップの駐車場専用入り口から車で入った。その途端すごい外車が俺の行く手を阻んだ。左ハンドルを握っているのはサングラスの女だ。ここは出口専用ではない。
俺は運転席の女に手で避けるように合図した。だが向こうは避ける気がない。良く見ればすごくスタイルが良く、かなりの美人だ。ハーフかもしれない。
だがとても危険な香りがする。できれば争いたくない。俺は運転席から降りて、口に手を添えて大きめの声で言った。ここは入り口専用なんです。ですから出口の方から出てくれませんか?
組織員は決して路上で言い争いや喧嘩をしてはいけないことになっている。自分が悪くなくても我慢しなければならない。だからできるだけ相手を刺激せずに穏やかに言った積もりだった。
女も運転席から降りて来た。俺は驚いた。姿を現すとまるでセクシー女優のような容姿なのだ。だが全身から出ているオーラは暴力的な世界に関わりがありそうな雰囲気満載だ。毛皮のコートに黒い網ストッキング。チャラチャラしたイヤリングなど。まるでヤクザの情婦といった感じなのだ。
女はサングラスをかけたまま俺の全身を見る仕草をした。その後で鼻先で『はん』と笑った。
「あんた、何様? 出口か入り口か分かんないけど……そっちがちょっとだけ下がれば済む話じゃないの。」
俺は、これは厄介だ、これ以上トラブルにする訳にはいかないと思った。車の後ろの方にちらりと男の影も見えた。やはりサングラスをかけている。こじれたらきっと顔を出す積もりで待機しているのだろう。
俺は肩を竦めて、わかりました。それじゃあこっちが下がることにしてあげましょう。そう言って運転席に戻ろうとした。そのとき『ガン』と音がした。振り返ると女が笑ってボンネットに片足を上げていた。
「覚えときな。ボロ車の方が譲るもんなんだよ。さあ、さっさとどきな」
いつ思い出してもこの場面は腹が立つ。女はテツコンドウでもするのか? 足を思い切り上げて踵からボンネットに落としたんだ。女の靴も少しは傷んだろうが、ボンネットは少しへこんでしまった。後で裏側から少しずつ叩いて戻したがひどいことをする。
その後タイミングよく後部席から白いスーツに黒いシャツの男が出て来て女に声をかけた。
「サツキ、なにか問題でもあるのか」
「ないよ。今このボロ車をどかせろって言ったところさ」
俺はサツキと言う女に飛びかかった。ボンネットに上げた右足を太腿ごと抱えてそのまま地面に倒すと俺はサツキの頭を膝の間に挟んで座った。
「何しやがる! あんたぁぁこの馬鹿男をしめてやって」
女が手を振り回したのでその手を掴んで折り曲げた足の間に挟んだ。すると足をばたばたさせた。毛皮のコートは捲くれ上がり太腿やパンティがあらわになる。
「あんたぁぁぁ! 何してるのよぉぉぉ。早く、こいつを」
だがサツキの聞いた音はドアのしまる音そして車の移動する音。それから自分自身の声が怒鳴っている言葉を聞いたのだ。
『馬鹿野郎。いったい相手を誰だと思ってるんだ。おととい来やがれ』
そして『チャーーーーーーーッ』という何か鋭い物で車のボディを引っ掻く音。急加速でタイヤが鳴る音……そういうのを聞いてサツキは混乱したようだ。
要するにサツキは俺に毒づいてすれ違いざまに手を伸ばしてなんか固いもので車のボデイを引っ掻いて行ったのだ。そして走り去った。だが混乱したサツキは勘違いして怒り狂った。
「畜生。お前はあいつとグルだったんだね。新しい女ができたもんだから、その女と逃げて行った。お前は見たことない顔だが、堅気のださい格好してあたしを油断させたな。いったいどこの組の者だ? あたしをどうしようってんだ」
まさかお前とセックスする積もりだとは言えない。言えないが言わなきゃ通じない。
「なんだって、あたしとセックス? ふざけんじゃないよ。殺されたいのかい。やれるもんならやってみな。こんな真昼間にやれるもんなら」
俺は手を伸ばしてサングラスを外した。ぞっとするほどの良い女だが目が三白眼で怖い。見ないようにして俺は毛皮のコートを開いた。すると中はいきなり下着姿だった。黒いブラジャーに黒いパンティそして黒い網タイツだ。
ボールのように丸々としたはち切れそうな乳房。そしてくびれたウェスト。白い腹に縦長の臍が笑窪のようにへこんでいる。
駐車場に入って来る車が脇を通り過ぎた。家族連れが車から降りて俺たちのすぐ傍を笑いながら通り過ぎて行く。お昼に食べるランチの話をしながら。
「なんだぁぁ。こら、てめえたち、自分らに関係ないと思って何知らん振りしてんだよぉぉぉ。警備員を呼べっ」
俺はブラジャーをずらした。仰向けに寝ているのに少しも潰れないボールのような乳房だ。その先端は花びらのような乳輪と乳首がつんと尖っている。俺はその両方を指先で摘んでクリクリと転がした。
「止めろよ、馬鹿。お前なんかに誰が……ひっ……やめろ……あが……」