カミングアウト-6
「でも、ずっと友達だった奴とそういうことするのって結構照れちゃったりするんだよなあ」
「ああ、特に土橋と桃子ちゃんってそういうことするイメージないもんな。じゃれ合って笑い合って、そっから先が想像しづらい」
「ああ、オレはいつになったらアイツと結ばれんのかなあ」
台詞は悲観的なものの、ニヤニヤ笑いながらコーラを飲み干す修を見てると、この状況を楽しんでいるかのように見える。
確かに男に免疫のないあの石澤さんが相手なら、ゆっくり歩み寄るくらいがちょうどいい、と思う。
それに比べて、俺って奴は……。
やっぱりヒシヒシと感じる、この焦燥感。
沙織のすべてを自分だけのものにしたいという欲望は、日増しに大きくなるけれど、臆する気持ちもそれに比例する。
愛しているから、臆病になるんだ。
楽しそうに笑い合う修と歩仁内を、虚ろな瞳で眺めながら俺は、不安を飲み込むようにポテトを口に放り込んだ。
「でもさ、あまりに遠慮し過ぎるのもダメだと思うよ?」
歩仁内が俺につられたように、ポテトに手を伸ばすと、チラリと修を見た。
「やっぱりそう思うよな」
「すぐ手を出されると身体目当てって思われるけど、あまりに何もしてこないと不安になるんだって。自分のことが好きじゃないのかなって」
「へえ」
「……で、不安になった女の子が、浮気しちゃうってパターンも結構あるみたい」
何気なく言った歩仁内の言葉に、咀嚼していたポテトが気管に入ってゲホゲホむせかえる。
う、浮気……?
遠い世界の話だと思っていたその言葉がやけに重くのしかかる。
い、いや大丈夫! 沙織は可愛いし、男に人気あるけど、沙織に限って……。
胸元の辺りをドンドン叩いてなんとか落ち着かせようとしていたら、
「あー、それはあるな。ホラ、隣のクラスの日村って奴さ。彼女が好き過ぎて手が出せなかったんだけど、彼女の方が臆病な日村に愛想尽かせて浮気しまくってたらしいぜ。大事にし過ぎるのも考えもんだな」
と、修の言葉。
落ち着くどころかこれじゃ不安でいてもたってもいられないじゃないか!