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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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カミングアウト-7

かといって、修は動揺してる様子はなく、日村の話をワイドショーの色恋ネタの一つみたいに他人事としてとらえているらしい。


そりゃお前は童貞じゃないから、いざとなりゃ何とかなるって余裕があるんだろうよ。


でも、俺は……。


「大山、大丈夫?」


相変わらずむせ返りっぱなしの俺に、歩仁内は心配そうに、紙ナフキンを寄越してくれた。


そんな時ですら爽やかな歩仁内。


コイツも壁を乗り越えて本間さんと一つになった。


ふと脳裏に浮かぶのは、隣でいつもニコニコ笑ってくれる、恋人・沙織。


好き過ぎて手が出せないだけなのに。


――あまりに何もしてこないと不安になるんだって。自分のことが好きじゃないのかなって。……で、不安になった女の子が、浮気しちゃうってパターンも結構あるみたい。


いやいや、俺は沙織をめちゃくちゃ大事にしてるし、大丈夫なはず。


――彼女が好き過ぎて手が出せなかったんだけど、 彼女の方が愛想尽かせて浮気しまくってたらしいぜ。大事にし過ぎるのも考えもんだな。


でも、大事にし過ぎても裏目に出てしまう……?


コイツらのさっきの言葉が、勝手に脳内でリピートされる。


そして、脳裏に浮かんだ沙織の笑顔にヒビが入ったかと思うと、やがて砕けた硝子のようにキラキラ四方に飛び散っていった。


「い、嫌だ……」


「「ん?」」


ほとんど聞こえないくらいの小さな独り言に、修と歩仁内が声を揃えて聞き返す。


しかし、もうそんな二人の心配そうな顔ですら目に入らなかった俺は、


「沙織が浮気なんて、嫌だあああ!!」


と、歩仁内がくれた紙ナフキンをクシャリと握り締めながら、店内に響き渡るほどの大声で叫んでいたのだ。




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