彼女を、支えるもの…-12
静かな病院、辺りは落ち着いた照明に照らされる。
目の前には、「手術中」の赤い文字が。
「お母さん、ううっ、こんな事って…」
「杏」
震える私の肩をそっと暖かく包み込んでくれる父、こんな時本当に頼りになる。
どうやら習いモノは、いつもと同じ5時で終了し、買い物を済ませて7時前には帰宅する
筈だったらしい、だがその途中信号無視をした乗用車に轢かれ、横断歩道で派手に夕飯の材料を飛ばし。
轢かれた場所は人の多い場所ゆえ、逃げようとした乗用車を運転していた男は辺りの人
の協力あって、逮捕されて。
何処か見覚えのある光景、そう母が搬送された先は、奇しくも絆の居る病院だ。
目の前でランプの落ちる音がし、手術中の文字が暗くなり、お互い顔を上げ、中から
今朝まであんなに元気だった母の変わり果てた姿、額に包帯を巻き、静かに眠っていて
その母を着々と病室に運ぶ看護師達。私も母の元に向かおうと思ったけど、母が無事なのか気になり、その場に残り。
「先生っ!華は、妻はっ!無事何ですよねっ!」
「落ち着いて下さい、頭を打ち、腰も強く打ち重症ですが、命に別状はありません」
その言葉を聞き、一気に力が抜け、父の腕に寄りかかる。
私達はこのまま医師に頭を下げ、すぐ様病室へ。
何一つ動じないベットの上で眠る母、だが辛うじてお腹に動きがあり。
「はぁー、ったく交通事故何て、行き成りだよしばらくの間、俺が飯を作んなくちゃいけねーなぁ、上手く出来るかな?納豆ご飯にチャーシュー麺くらいなら」
「それ誰でも出来るし、何料理出来る風に言ってんの」
「おう?ならオメーが作ってくれんのか?」
「無理」
即答、料理何てガラじゃないし。
「そっかー残念だな、娘の手料理何て父親なら誰だって楽しみにするのに」
「でも私もちょっと頑張って見るわ、このままお父さんに任せるのもあれだし」
「そうだ、食中毒起こすぞって、ホント性格わりーな」
「何よ、これでも少しは出来るんだから、時より台所手伝ってさぁー」
「口喧しい所はそっくりなのに、こういう所は何一つ似てないとは皮肉な」
「んだとコラァ!」
「だーはいはい、父さんちょっとお医者さんに呼ばれてるから、そこで待ってろ」
そう言って、席を立ち、病室には私と母だけに。
はぁ、何だか、もう、目の前が真っ白になってくる。
私の大好きな人は、何を言っても元気を取り戻してくれないし。私の良き理解者は今
大怪我をし、眠っており。
苦しい、どうして立て続けにこんな。
重りが容赦なく自分に圧し掛かるように、絶望を感じる。
はぁ、一体どうしたら良いんだろう
目を細め、母を見つめる。
こんな時、母ならどうするだろう
……ふと、優梨子サンと喫茶店付近であった事を思い出す。
「普段から、元気で、笑ったトコ以外見たことが無い」
!!
私は何かに気づいた
母なら、こんな時……
「杏?」
なにやら背中に父さん以外の視線が突き刺さる、だが今は振り向く気に慣れない。