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LADY GUN
【推理 推理小説】

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湯島武史-3

 席につきまるで話すきっかけを探しているような仕草を見せたのは湯島だけではなかった。世間話から入るのかいきなり本題から入るのか若菜も躊躇っていた。しかし妻である絵里がコーヒーを運んできた時点で湯島から話を始めた。
 「いつか…、警察の方がこうして訪れて来るのを僕は待っていたのかも知れません…。」
そう言った湯島の顔は極めて穏やかだった。変な言い方だが若菜に安心感をもたらせた。若菜は不思議と心が落ち着いていくのを自分でも感じた。コーヒーを起き湯島武史の隣に座る絵里を見て若菜は言った。
 「ご主人と二人きりでお話をしてもよろしいでしょうか。」
湯島の過去を知りショックを受けるであろう絵里に気を使う。
 「いえ、一緒で大丈夫です。妻は全てを知っていますから。」
 「えっ…?」
若菜は驚いた。全てを知って結婚したのだろうか…、だとしたら湯島武史はどれだけの魅力を持つ男なのか、それともどれだけの懐を持つ女なのか、どちらかである。レイプ犯と私利ながら結婚したなら絵里はどんな気持ちで湯島武史を夫として一生を共にする決心をしたのか知りたくなった。逃げも隠れもする様子もなく、むしろ堂々と質疑に答えようとしている2人に戸惑いさえ覚えた。
 「では率直に言います。湯島武史さんは15年ほど前に神と呼ばれ大勢の覆面男を従え女性を次々にレイプしていた、当時警察が必死になって行方を追っていた容疑者なのでしょうか。」
目を見据えて問う若菜に対し、それに劣らずしっかりと目を見据えて答える湯島。
 「はい。間違いありません。」
とうとう長きに渡る容疑者を見つけ出した瞬間だった。しかし若菜には達成感は全くなかった。むしろこれが始まりなのだと感じた。
 「どうして僕だと分かったんですか?」
 「いなぎ市で矢沢祐樹を麻薬取引の現行犯で逮捕しました。彼の供述から判明しました。」
若菜は湯島を観察した。矢沢を恨むか恨まないのかを。そんな湯島に怒りの表情が浮かぶ。しかしその怒りは若菜が想像していたものとは違っていた。
 「矢沢が麻薬…!?あの馬鹿!どうして麻薬なんかに…!レイプから足を洗ってからまじめに生きてきたじゃないか!果歩ちゃんを幸せにしようと頑張ってきたんじゃなかったのか!?」
 「果歩さんとは浮気が原因で離婚なされましたようです。」
 「えっ…!?」
まさに寝耳に水だった。
 「一週間前、浮気をしてしまったようです。それが次の日には果歩さんにバレてしまいすぐに離婚届に判を押され家を出て行ってしまったと言ってました。以降その浮気相手と夜を共にする内にドラッグセックスにはまり、ナンパをして連れ帰った女性に勧めて使用して楽しんでいたんです。でも本人は麻薬使用はしておらず、ドラッグで女性が乱れる姿に喜びを得ていたようですね。始めの浮気から逮捕までわずか一週間だったんです。」
湯島は不審そうな顔をして言った。
 「…、田口徹が絡んでますね?」
 「はい。その浮気相手は田口から麻薬を受け取り密売していた女性でした。」
 「やはり…。」
 「でも矢沢を陥れたりする意図は田口にはなかったようです。昔世話になった矢沢をいなぎ市で偶然見かけて、その恩返しのつもりで一晩その女性を預けたという事らしいです。矢沢と肉体関係を続けたのは自分の意志だとその女性は言ってましたから。」
湯島は少し安堵したように溜め息をつき言った。
 「そうですか…。しかしやはり引き寄せあってしまうものなんですね。少し前に田口が女性刑事…、いや隠し事はやめましょう。あなたの上司の皆川静香さんをあんな目に合わせてしまったでしょう?その少し前に田口は僕の所に現れたんです。」
 「ほ、本当ですか!?」
若菜は身を乗り出した。


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