オアシス-10
「ぁ あ ぁぁ」
「ん ふっ」
ビクビクと収縮するも『精』を吸う様子は無く、テオは息を吐いて力を抜いた。
「は パル ?」
「ふぁ」
焦点の合ってない視線でぼんやりするパルは、無意識に手を上げてテオの頬に触れる。
その手に自分の手を重ねたテオは、少し顔を動かして手の平に唇を押し付けた。
「ふふ……やっぱり……オアシスだぁ」
身体も心も満たされる。
「んじゃ、ゆっくり休めよ。オレが包んでやる」
きっと、魔物であるパルにとってテオと過ごす時間は人生のほんの1部分だろう。
それなら、人生のその間は、心も身体も満たされる穏やかな時間であって欲しい。
すぅっと眠りに落ちたパルの表情は少し笑っていた。
「……お前のがオアシスだっつうの……」
心も身体も満たす存在がオアシスだというなら、テオにとってはパルがそうだ。
きっと皆、自分のオアシスを見つける為に、人生という旅をしている。
そんな哲学的な事を考えたテオは、似合わねぇ、と鼻で笑ってからパルをきゅっと抱いた。
騒がしくも穏やかな夜が明けていく。
並んで輝いていた2つの月が、ほんの少し重なって沈んでいくのだった。
‥ The End ‥