過去-1
今年の正月はよく晴れて、朝から穏やかな一年の始まりだった。遼は一人暮らしのアパートで、こたつに脚を突っ込んでビールを飲んでいた。お決まりの正月特番にも飽きて、彼はみかんの入った小振りの籠の横に置いていたリモコンを手にしてテレビの電源を落とし、そのまま仰向けになって両腕を枕に天井を見つめた。
秋月遼(あきづきりょう)。26歳。すずかけ町の二丁目交番に勤務する警察官だ。彼はそのまじめで実直な仕事ぶりを買われ、昨年まで見習い警察官日向夏輝(ひむかいなつき)の実習指導員を務めていた。その夏輝も12月で実習期間を終え、本職警察官としての一歩を踏み出した。
遼にとっては初めての指導教官体験だった。実習中、夏輝が一人前の警察官になっていく手応えを感じ取った遼は、久々に充実した気持ちで新しい年を迎えることができていた。
「去年は正月早々初詣の酔客のトラブル処理だったからな……」
遼は独り言を呟き、目を閉じた。
――夢をみた。
遼は亜紀の両頬をそっと包み込み、静かに唇を彼女のそれに押し当てた。
亜紀はうっとりとした表情で目を閉じ、遼の唇を味わった。
彼は次第に激しく口を交差させながら亜紀の唇と舌を愛した。二人の頬を伝って唾液が糸を引いて垂れた。
遼は焦ったように彼女の身体をベッドに横たえ、ブラを外し、露わになった二つの白く、柔らかな膨らみを手でさすり、口で吸った。
亜紀は身体を仰け反らせ、喘ぎ始めた。
「遼、遼、好き……、愛してる」
亜紀の吐息混じりの甘い声を聞いて、遼は間近で彼女の目を見つめながら言った。「亜紀、僕も愛してる。君をずっと……」
そしてゆっくりと彼女のピンク色のショーツを脱がせ、自らも下着を脱ぎ去った。
「いいかい? 亜紀」
亜紀は黙ってうなずいた。
遼は、大きく跳ね上がった持ち物をそっと亜紀の秘部に押し当て、やがてゆっくりと中に入り込ませた。
「あ、ああ……」
亜紀は言葉にならない声を発した。遼はその声を聞いてますます身体中を熱くし、深く入り込んだ自分のものを亜紀の中で前後に動かし始めた。
二人の身体は汗にまみれ、シーツからもほのかに湯気が立ち上り始めた。
苦しそうな顔で歯を食いしばる遼。
夢見心地の表情で揺れ動く亜紀。
ベッドの軋みが最高になり、遼と亜紀は同時に身体を硬直させ、細かく震えた。
「イくっ!」遼が叫んだ。
「遼、遼ーっ!」亜紀も叫んだ。
――遼は目を見開いた。全身に汗をかいている。
彼は身を起こした。心臓が激しく打っていた。
しばらく息を整えていた遼は、大きなため息をついてテーブルに載っていた缶を手に取り、残っていた生ぬるいビールを飲み干した。