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forget-me-not
【女性向け 官能小説】

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ワスレナグサの花言葉-7

3年間の超遠距離恋愛。


今みたいにネットで簡単に声を聞けたり顔を見れたりするわけじゃない時代。


それでもおばさんは、その人と結ばれる運命と信じ、時間にも距離にも負けないつもりだった。


だけど若い二人には、3年間という時間、日本と海外の距離という壁はあまりに大きすぎて――寂しさという感情はいつしか二人を蝕んで、小さな溝を作っていった。


一日一日はめまぐるしく過ぎていくのに、3年間は終わりが見えなくて、会いたい気持ちは膨らむのに、それすら叶わず。


些細なすれ違いは、やがて諍いの種になり、遠距離なんかに負けないと意気込んだ決意は揺らぎ――。


彼の方が先に心が折れてしまった。


そして彼は、やっともらえた久しぶりの休みで日本に一時帰国をした時に「好きな人ができた」と、おばさんに告げたそうだ。


「……別れを言われたときは、信じられなくてね。運命の人って思っていたから、別れたくない、全てを捨ててでもついていくからって泣いて縋ったんだけど、彼の心にはもう私はいなくて……、結局身を引くことしか出来なかった」


「…………」


「運命の人に振られて、世界がすべて色褪せて、毎日泣いてばかりだった。ご飯も食べられなくてね。信じられないでしょうけど、痩せて痩せて鶏ガラみたいになってしまったのよ」


ちょっと肩をすくめてイタズラっぽく笑うのは、少し潤んだ瞳をごまかすための照れ隠しなのか。


何だかあたしまで目の奥がじわりと痛んだ。


すると。


「おーい、まだ店閉めないのか?」


店の奥にある引き戸がガラッと開いたかと思うと、額が大分後退している50代くらいの男の人が顔を覗かせた。


テレビの笑い声と共に飛び込んできた、まるでこの場にそぐわない生活感溢れた呼び声。


おそらくこのおばさんの旦那さんなんだろう。


「ああ、ごめんなさい。お客さんに育て方を説明していたの」


それに合わせたみたいにおばさんの声のトーンが少し高くなる。


ランニングシャツに、ほんのり赤い顔。もしかして晩酌でもしていたのかもしれない。


そんな彼と目が合えば、何だか「早く帰れ」と言わんばかりの不躾な視線。


ちょっぴり気まずくなったあたしは、彼からサッと目を反らした。


「……そうか。でも長々とお喋りしてお客さんを引き留めてたらご迷惑だからな。ほどほどにするんだぞ」


「はいはい」


おばさんとは対照的な、痩せた身体の持ち主は、素っ気なくそれだけ言うと再び戸を締めた。


おじさんに話の腰を折られて、辺りに漂う微妙な空気。


あたしとおばさんが目が合えば、お互いにバツが悪そうに笑い合った。



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