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forget-me-not
【女性向け 官能小説】

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ワスレナグサの花言葉-8

「あの人ね、一人で晩酌してもつまらないから、ああやって私を急かして早く話し相手になれって言ってるのよ」


口の横に手を添えてヒソヒソ声で話す彼女に、クスクス笑いが漏れる。


ぶっきらぼうで怖い印象を受けたけど、寂しがり屋なんだと思うと、あの仏頂面も可愛いげがあるかもしれないとすら思えた。


「そうだったんですか」


「男っていつまで経っても子供みたいな所があるのよね」


「……あの、長居してすみません。あたし、もう帰りますから」


「ああ、そんな気にしないで? こちらこそこんなおばさんの話に付き合わせてしまって悪かったわね。あなたを見てたら、ふと昔を思い出しちゃって、ついお喋りしちゃった」


「そう……ですか」


「月並みなことしか言えないけど、今は悲しくても時間がきっと癒してくれるはずだから。それまでは泣いて泣いて、思いっきり泣けばいいのよ」


陽介のことを思い出すと、また痛み始める胸。


「それじゃあ、それ、あげるから是非植えてみてね」


「……はい」


そんなやり取りをしたあたしは、椅子から立ち上がってバッグにポトンとワスレナグサの種が入った封筒を入れた。


ホントに時間が癒してくれるのかな。


――私を忘れないで。


そんな意味を持つ花の種を植えたら、ずっと諦められずに泣いているような気がする。


でも、出会って間もないけど、このおばさんは悪い人じゃないのは十分伝わってくる。


きっと、意地悪でワスレナグサの種をくれたわけじゃない。


たまたま手元にあったのがワスレナグサの種で、単にガーデニングでもして気を紛らわせろって言いたいのだろう。


そう、深い意味はないはずだ。


頭の中でそう結論づけると、あたしは彼女に向かって深々と頭を下げた。


「傷を手当てしてくれてありがとうございました」


「いいえ〜、気にしないで。もし、わからないことがあればいつでもいらっしゃいな」


親切でそう言ってくれてるのはありがたいけど、それには答えられず小さく笑うだけ。


だって、ここは陽介が利用する駅の近所。


陽介を諦めると決めた以上、この街に足を踏み入れるわけにはいかない。


少しずつ、陽介のことを忘れる努力をしないといけないから。


「……それじゃ」


あたしが再び、おばさんに小さく頭を下げて、店を出ようと背中を向けた、その時。


「私ね」


おばさんの声があたしの背中にぶつけられた。




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