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終わり良ければ
【女性向け 官能小説】

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終わり良ければ-1

1.
秋山健二は、10年ほど前に創立された、六本木にオフィスを持つ中堅IT企業のグローバル・ネット・サービス(GNS)のシステムエンジニアである。電気通信大学を中くらいの成績で卒業し、先輩の勤めるGNSに紹介されて入社をして、3年になる。
会社が新しいので、社員の平均年齢も若く、いわゆる適齢期の男女がひしめいている。当然のことながら、誰と誰とがどうなったと言うような話題は尽きない。
今年の新卒入社の中で、とりわけ人目を引く女性社員がいた。その名は、三条裕美。学修院大学を出て元公爵家の血を引くとかで、美貌もさることながら、その立ち居振る舞いは優雅である。
ある日、秋山は先輩の平林に呼ばれた。
「秋山君、君は小松さんとは親しいよなあ」
「はい、まあ」
平林のいう小松映子は、健二よりも3年前の入社で、当時は社員数も今の半分くらい、急速に増えた女性社員の中で、歳は若いが今やお局的な存在になっている。
入社したばかりの健二を何くれとなく面倒を見てくれた。社員親睦のダンスパーティでは、多少腕に覚えのある健二は、映子を相手に踊りまくって、影では二人の仲をささやく者もいた。男女関係に鈍い秋山は、何も気づかぬまま月日が経って、今はもう誰もうわさをしなくなっていた。
「実はなあ、三条さんなあ、この前キッチンで泣いていたそうだ。同僚が話を聞いたところ、小松さんが何かときつい事を言って苛めるというんだな」
確かに裕美は美人で優雅ではあるが、仕事をてきぱきとやるタイプではない。レセプションならば能力を発揮できるのだろうが、とかくおっとりとしていて、仕事を時間内に仕上げたり、顧客を相手に渡り合うようなことは出来そうにない。
「彼女は大事な取引先の社長の娘さんでなあ、このまま放っておくと言うわけには行かんのだよ。仕事の内容については考えるとして、君からそれとなく小松さんに一寸手加減をしてくれるように、上手く話してくれんかなあ」
「はい、分かりました」
入社以来世話になっている先輩の頼みでもあるし、言われてみれば、映子と社内で一番親しい男性が自分であることは認めざるを得ない。

分かりましたと言ったものの、健二は女性が苦手である。女嫌いではないが、どうしたらいいか分からない。裕美を見ればこんな女性と付き合ってみたいなとは思うし、彼に心を寄せる女性が社内にいるのも知っているが、といって、何か具体的に行動する勇気はない。
どうすると言う考えも浮かばないまま、映子をお茶に誘った。
会社の帰りに、六本木交差点のアマンドのテーブルに、コーヒーを前にして二人は向かい合った。
「今度入った三条さんどう?」
「うん、いい子なんだけど、何やっても遅いんですよ。仕事の出来はまあまあアクセプタブルなんですけどねえ」
「実はぶっちゃけた話し、平さんに頼まれてねえ、彼は僕の大学の先輩でねえ、彼女のポジションについては考えるから、皆でサポートしてくれないかと言うんだ。君が一番彼女に近い部署にいるし、僕としては君が一番頼りになるんでお願いするんだけど。彼女は会社の大事なお客の娘だそうで、会社を辞めるなんてことになると困るって、平さんも頭を痛めているんだよ」
「分かりました。ほかならぬ健二さんの頼みなら、一肌でも二肌でも脱ぎましょうか」
健二からデートに誘われたと思った映子は、話の展開に気落ちをしたものの、今まですっかり無視をされてきたことを思えば、自分を頼っていると言う彼の言葉にかすかな悦びを感じた。


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