全裸、ダメ、絶対-3
息を荒げたアーウェンがうめき、ラクシュの顎に手をかけて上を向かせた。そのまま唇がかさなり、口内を味わうように舐められる。
「ん、ふ……」
ラクシュの頬を両手で掴み、何度も角度を変えて、性急に唇を貪る様子は、必死ささえ感じるほどだ。オリーブ色の髪からは狼の耳まで出ている。
「言ってください、ラクシュさん……あと、何をしたいですか?」
「んっ……服……」
自分の黒いローブを摘んで見せた。狼の熱い吐息にあてられ、理性がゆるんでいく。
「私、全部、脱いで……尻尾、触りたい……」
思いきって打診すると、アーウェンの蒸気した顔が、さらに真っ赤になった。わなわなと口元を震わせている。
「っ!!」
「だめ?」
「だ、ダメなわけ……え、ええっと……で、でも、なんていうか、もう俺、絶対に歯止めが……っ!!
ら、ラクシュさんから、脱ぐって……ダメじゃありませんけど……っ!! うわあああああ!!!! どうしよおおおおーーーーっっ!!!!!!」
叫び声をあげて頭を抱えこんでしまったアーウェンに、ラクシュは首をかしげる。
「ん?」
ダメではないと言っても、明らかに困っているようだ。
アーウェンの行動は、たまによくわからない時がある。
ラクシュはシーツにペタンと座り、ふと自分の足元に視線を下ろした。
「……アーウェン、心配ない」
丸まってブルブル震えているアーウェンの背中を、軽く指でつついた。
これでも彼が困るようなら、きっぱり諦めよう。
「きみが、困るなら、全部、脱がない」
首をふり、自分の足元を指差した。
いつもは素足に柔らかな布スリッパが、ラクシュの定番だが、今日は久しぶりの外出だったので、白い靴下をはいたままだった。
「靴下、は、脱がない」
下着を残しても、後で抱かれるなら意味がないし、我ながら良い思いつきだと頷く。
「あ……あ……」
アーウェンは大きく眼と口を開いて、ラクシュを凝視していたが、不意に低くうめいた。
「ら、ラクシュさん……」
「ん?」
小首を傾げると、ものすごい力で抱きしめられた。
「ラクシュさああああんーーーーーっっっ!!!!」
「アーウェ……っ!?」
良いのか悪いのか尋ねる暇もなく、押し倒されて唇を塞がれた。
アーウェンの手がローブの襟元を掴み、薄紙のようにあっさり引き裂く。
「あっ! んんん……」
舌で激しく口内をかきまぜられ、ラクシュの欲情も高ぶらされていく。胸の先端を吸われ、下腹部から蜜があふれ出した。
「ラクシュさん……綺麗です……俺、ずっと見たかった……」
初めてラクシュの身体を見たときは、あんなに嫌そうだったのに、アーウェンはうっとり囁く。
やはりアーウェンの行動は、たまによくわからない時がある。……と、ラクシュは脳裏の端で困惑する。
それに、彼のまとうキラキラが、さっきよりもっと増えて、眩しすぎる。
しかし、興奮しきり半獣となったアーウェンの身体は、オリーブ色の毛並みに覆われ、眼を瞑っても、暖かく気持ちいい毛皮を全身で感じることができた。
心地よさとアーウェンのキラキラが、肌をすり抜けて心臓の奥まで滲みこんでくるような気がする。
ラクシュの言語能力は低すぎて、この感情をなんと呼べばいいのか解らなかったから、一番近いものを囁いた。
「……きみが、好きだよ」