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変容
【教師 官能小説】

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変心-4

“あれから何日経ったのだろう。スーパーでの出来事が随分昔のことのようだ。”

 ぼんやりとした頭で恵は思った。とうの昔に自力での脱出は諦めている。今は耐え難い渇きと死の不安に怯えながら、男が来るのを待つばかりだ。
 寝ているのか起きているのか分からない状態で、恵はただひたすら男を待っていた。

 そしてとうとう男はやって来た。三度目のドアが開く音は、恵にとって救いの音色だった。

 男は前回同様、無言でゆっくり恵の方へ歩いてきた。そして同じく、ジッパーを下げ陰茎を取り出し言った。

「しゃぶれ。」

 男との距離は50p程。恵は重い身体を引きずり近づいていった。その姿はさながら砂漠でオアシスを見つけた遭難者のようであった。ゆっくりだが確実に恵の顔と男の陰茎が近づいていく。恵はカラカラに乾ききった口を開けた。雛鳥が親鳥からもらうエサをもらう時のように。

 男はその姿を無言で見つめていた。

 あと10p。

 異臭に混じって男の陰茎の臭いが感じられる距離だ。しかし、その距離があと数センチにまで縮まった時、恵の動きが止まった。

“そうだ。それでこそ面白い。”

 大抵の女はこの時点までに堕ちていた。男は過去に何人もの女を便器に仕立て上げてきたが、この段階を超える女はほとんど居なかった。セックスのセの字も知らない様なお堅い女が、頬を窪ませ、嬉々としてチンポをしゃぶる姿を何度も見てきた男にとって、恵は久々に出会えた歯ごたえのある極上の獲物だった。

“それじゃあ、最後の仕上げと行くか。これを超えられたらおまえの勝ちだ。”

 男はマイティのカードを切った。

 後数センチの、しかし超えられぬ距離に逡巡する恵を見た男は、上着のポケットからペットボトルを取り出した。

“水だ!”

 男の動作を目で追っていた恵は、それと分かった時、飛びつくように水に向かって伸び上がった。
 男は素早く後ろに数歩下がると、恵の移動範囲外でゆっくりとペットボトルの水を飲み始めた。ごくごくと喉が鳴り、水はどんどん無くなっていく。恵は鎖を限界まで引き延ばし、前のめりで水を求めた。

「水、下さい!お願いします!!水!!何でもしますから!!!ごめんなさい!!」

 嫌悪すべき男に、とうとう恥も外聞も捨てて必死に懇願する。しかし、無情にも水は全て男の胃の中に消えていった。

 底知れぬ絶望感が恵を襲った。

“もう終わりだ。私は最後のチャンスを無駄にした。なぜあの時、ためらってしまったのか。死ぬより身体を汚される方が何千倍もマシだろうに。”

 全ての希望を失い、崩れ落ちる恵をよそに、男は次の行動に移った。空になったペットボトルの飲み口を自らの陰茎に近づけると、そこに小便をし始めたたのだ。じょぼじょぼと黄色い液体がペットボトルに溜まっていく。恵はその音に顔を上げた。

 やがて、水の代わりに尿で満たされたペットボトルができあがった。男はそのペットボトルを恵の行動限界ギリギリの所に置き、呆然としている恵に声をかけた。

「次会う時までおまえが生きていられたら、もう一度だけチャンスをやる。」

 そして、男は陰茎をしまうと、振り返りもせずに出て行った。

「待って!お願い!」

 最後の気力を振り絞り声をかけるも、希望の扉は再び閉ざされ、残されたのは小便の入ったペットボトルのみだった。

 恵は忌々しそうな瞳でそれを眺めた。男の意図するところは分かる。次のチャンスを掴みたかったら、これを飲んで生き延びろという事だろう。確かに渇きを我慢するのももう限界だ。あまりの渇きに、自分の尿を飲もうかと思いもした。実際、小便をしてみもした。しかし、後ろ手に拘束され着衣もそのままの格好では、出した尿も下着とズボンを多少濡らしただけで、床に溜まる事はなかった。第一、その尿は極度に濃縮されたもので、量自体もほんのわずかしかなかった。結局、服を着たまま失禁したという結果だけが残り、渇きを癒すことはできなかった。

“喉が焼けるようだ。水。水が欲しい。”

 しかし、男の小便を飲むなどできるものか。そんなことをするくらいなら、いっそこのまま餓死してやる。

 そう…。恵がその選択を実行することこそが唯一残された、男に勝利する方法だった。
 しかし、それならば今までに何度も自殺するチャンスはあった。手こそ使えないが、舌を噛み切ったり、鎖を首に巻いて死を選び、貞操とプライドを守る事はできたのだ。だが、実際にはそのどれも恵にはできなかった。身体を許せば助かるかもしれないという儚い望みが目の前にあったからだ。加えて、未だ部屋の隅に転がっている浮浪者の死体が、死の恐怖をいやが上にもかき立てていた。

 もう存在自体気にならなくなっていた死体だが、だからといって無くなったりはしない。飛び出した眼球と舌、ふくれあがった顔には苦悶の表情が刻印されている。ああは成りたくない。絶対に。

 生と死、恥辱とプライドの狭間で恵は最後の葛藤を続けていた。


 そして…
 
 とうとう恵は選択した。


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