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変容
【教師 官能小説】

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変心-3

 時間の感覚が麻痺し、皮膚が破け手首から血が流れて、肩の関節が砕けるような痛みを発している。もちろん一睡もしていないし何一つ口にしていない。疲労は極に達しているはずだが、それでも恵は足掻き続けた。死体が転がる無機質な部屋で。

 そしてとうとうその時が訪れた。
 部屋のドアノブがたてる小さな音は、希望の扉が閉まる音だった。

 男は昨夜と変わらぬ服装だった。ゆっくりと、しかし真っ直ぐに恵に近づき、ズボンのジッパーを下げた。そして陰茎を取り出しこう告げた。

「しゃぶれ」

 もう打つ手がない。断ることは死を招く危険性がある。二人の子供が頭に浮かんだ。途端、途轍もない恐怖が恵を襲った。まだ死にたくない。身体を汚されようとも…。だが、容易に男に屈したくない。夫以外の性器を受け入れるなんてできない。
 恵は押し黙ったまま、身じろぎもせず視線を床に向けていた。


“想像通りの反応だ”

 男は恵を見つめながら思った。一晩中もがき続けたのだろう。顔はやつれ、髪は乱れ、服はしわくちゃだ。手首からは血が流れ、ベッドの上の毛布は床に落ちている。ただ、二重の大きな瞳には、怯えだけでなく未だ消えぬ意志の光を宿している。

“その光が消え、絶望の暗い穴に変わるのが、楽しみで仕方ないよ。”

 昨晩男が発した言葉にすがるしかない状況を作るために、男は浮浪者を殺し、処置もせずに部屋に放置した。さらに一晩何もせずに恵に脱出の機会を与えた。恐怖を与え、危機感を煽り、自力での脱出のが不可能であることを知らしめるために。

“後一歩かな。”

 恵が自ら進んでチンポをしゃぶるには後いくつかの行程が必要であることを男は理解していた。生命の危機を「実感」させる事。逃避が「絶対に」不可能である事。精神的にも肉体的にも疲労させる事。そして最後に、充分頑張ったと自分に言い訳ができるようにする事。これらの要素が満たされた時、この女教師は夫以外のチンポを自分の意志で口にするだろう。そして、一旦そうしてしまえば、更なる行為を拒絶する理由も無い。言われるがままに精液便所に成り果てる。
 そう、恵は未だ男の目的を理解できぬままだが、男が狙っているのは金でも身体でもなく、恵の心だった。

 昨夜同様、双方無言の数分間が過ぎた。

 男は陰茎をしまうと何も言わず部屋を後にし、再び恵は一人になった。
 男が踵を返して出て行こうとする時、恵は声を発しそうになった。

“もう助けて下さい。”

 しかし、男にすがるかの様なその言葉は発せられることなく、扉は無情にも閉められてしまった。


 長い長い時間が過ぎていった。

 
 思わず巡ってきた二度目のチャンス。もちろん恵は必死に抗った。しかし、極度の緊張と疲労は確実に心身を侵し、やがて何の進展もないまま、恵は意識を失った。

 一体何時間眠っていたのだろう。目を覚ました恵は辺りを見回すが、時刻を推測できるようなものは何一つ無い。死体が放つ強烈な臭気にも慣れてしまい、感覚を刺激するのは体中の痛みと強烈な空腹感。そしてそれに勝る喉の渇きだけだった。

“あの男はいつ来るの?”

 気がつけば男の来訪を待っている自分がいた。
 自力での脱出ができないと分かった今、状況を変えるファクターはあの男しかいない。このまま放置され続ければ、餓死が待っている。……いや、餓死させるつもりなのかもしれない。再び襲う大きな恐怖に、恵は身を震わせた。

“いやだ。いやだ!助けて!!お父さん!!お父さん!!!”

 望み薄なことは分かっているが、それでも奇跡的に夫が助けに来てくれるのではないかという思いを恵は捨てきれずにいた。ただ、奇跡にすがるその思考そのものが諦めに近い箇所から湧き出てくるものであることを恵は自覚していなかった。

 そして、更に時間は過ぎていった。

 もはや恵にとって時間は味方ではなかった。命を蝕む黒い虫のように、恵の体力と気力は時間の経過と共に削ぎ落とされていった。


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