残酷な優しさ-8
「……まあ、そう思われても仕方ねえか」
「そ、そうだよ。それに色んな女の子と遊んだりしてた陽介が、あたしを好きだなんて、質の悪い冗談にしか思えないよ。カノジョだって次々に作っていたし……」
陽介は、遊んだりだけじゃない。期間は短いもののそれなりにカノジョを作っていた。
付き合い始めこそ、陽介はカノジョ一筋でいようと意気込んであたしとの関係を一旦止める。
だけどすぐにうまくいかなくなって、結局はあたしの所に戻って楽な関係に戻ってばかりの陽介を、遊び人じゃないなんて誰が言えるだろうか。
すると、陽介は相変わらずの苦笑いばかりで、胡座をかいていた膝を仕切りに揺らしていた。
「俺、ヘタレだけど、ホントはさ。お前と初めて関係持ったあの日、カノジョと別れてお前に告ろうって思ってたんだぜ」
「は?」
「俺、ずっとお前を友達として見てるつもりだったけど、どこかで恋愛感情があったんだよな。でも、くるみも俺も相手がいるし、何よりお前は俺を全然異性として見てないし。だから友達のままでいる方がいいのかなって、この気持ちには気付かないようにしてた。……だけど、そんなある日、彼氏と別れたお前が『エッチしない?』って誘ってきたんだ」
「…………!」
陽介と一線を越えたあの日の記憶が甦る。
「正直、迷った。ここで一線越えたらカノジョがいるのにハマってしまうって。でも彼氏と別れてふさぎ込んでるくるみを見てたら、見ない振りしてた気持ちがどんどん溢れてきて……気付いたら押し倒してた」
いつもセックスの最中でも余裕な顔している陽介の、思いもよらない本音に、身体がゾワゾワと粟立っていく。
やがて、貧乏ゆすりみたいに動かしていた膝がピタリと止まると、陽介はゆっくりあたしの目を見た。
「ヤり終わって、自分の気持ちがようやくわかったんだ。俺はやっぱりくるみが好きだって。だから、俺、カノジョと別れるって決めたんだ。だけど……お前に告る前に、釘刺されちまったんだよ」
――ね、これからもあたし達こうやって割り切った関係でいない?
ハッキリ覚えているあの日の出来事。
スグルに捨てられたあたしは、カノジョのいる陽介に惹かれていくのが怖くて、かといって陽介のことまで失ってしまうのも怖くて、咄嗟に出た言葉。
だけどそれが結局、あたしの首を締めていたなんて。