残酷な優しさ-7
「俺、たまにお前に好きって言ってたんだけどな」
思わず顔を上げれば、舌を出すいたずらチックな顔。
そんな顔が出来るのは、あたしを過去のものだと昇華したからだろうか。
「え？」
「覚えてねえか、やっぱり」
「…………」
自嘲気味に小さく笑う陽介を尻目に、必死で記憶の糸を手繰り寄せる。
そんな嬉しい言葉なら聞き漏らすはずがない。
大体陽介がそんなことを言うのは、セックスの時に気まぐれで言う時だけ。
それを言えば、あたしが何でも言うことをきくのを知ってる陽介は、上手くそれを使ってさんざん恥ずかしいことをさせてきた。
でも、まさかあれが……？
陽介の顔を見上げると、彼はゆっくりかがんであたしの目の前にドカッと座った。
「ヤってる最中に告っても、それどころじゃねえか。やっぱりドサクサ紛れに告るなんてヘタレもいいとこだな」
「う……そでしょ？ だって……あんな……玩具みたいな扱い方しかしてこなかったじゃない」
陽介とのセックスは、何度もイかせてくれるし、かなり相性がいいと我ながら思う。
だからと言ってその行為に愛情がこもっているかと言えば、否、である。
陽介の目の前で自慰行為をさせられたりなんかはしょっちゅうだし、行為の最中を撮られたりすることもあった。
外でシたこともあったし、身体にアザが出来るくらいきつく拘束されたことも、道具を使って気を失うくらい上り詰めらせられたこともあった。
カノジョには出来ないからと、悪びれもせずに陽介はあたしを弄んできた。
いくら気持ちよくてもこんな抱かれ方で、愛されてるなんて思うわけがない。
だけど、ただの玩具でもよかった。
陽介にとってはただの性欲処理の道具にしか過ぎなくても、重なる肌の温もりが、乱れるあたしに欲情する彼の身体が、その時だけは自分のものになってくれる、それだけで充分だった。