そうだ ごはん買いに行こう。-8
「う……ん、ん、ふ……」
さっき突っ込まれた指の血より、もっともっと美味しくて、抗えなくなる。
頭の中が真っ白になって、無我夢中でアーウェンの口を離す。両手で逞しい首をひきよせ、浮かぶ血管をめがけて牙をつきたてた。
「っ!」
短く息を飲む声も、殆ど聞えない。
耳の奥がジンジンする。身体中が火照り、脚の付け根の奥が疼いてたまらない。
「っは!」
我に返り、真っ赤に染まった口を離すと、アーウェンが荒い息を吐いていた。
「あ、あ……あ……」
頭痛も気だるさも抜け、身体中にまた力がみなぎっているのに、全身の震えが止まらない。ガチガチと歯が鳴り、舌がもつれる。
「ごめ……ごめん……ごめんね…………おねが……い……」
吸血鬼の吸った傷は、痕は残ってもすぐに血が止まる。
アーウェンの首筋に二つ開いた小さな穴から、赤い雫が一滴だけポツンと滴り、ラクシュの頬に落ちた。
「ラクシュさん……?」
少し青ざめているアーウェンに、夢中ですがりついて叫んだ。
「おねがい……わたしを、いらなくなっても、いいんだ……でも、きらいに、ならないで!!!」
怖くてたまらず、目を瞑って震えていたら、そっと頭を撫でられた。
「俺はもう、ラクシュさん無しじゃ生きていけません。俺を買って、こんなに好きにさせちゃったんだから、ちゃんと最後まで責任とってくださいよ」
「アーウェン……?」
大好きな声で紡がれた言葉に、驚いて顔をあげたら、アーウェンがもの凄く嬉しそうに笑っていた。
キラキラがいつもよりもっと眩しくて、たまらずに目を閉じたら、唇に軟らかいキスをされた。
「ん……ん……」
頭がぼうっとなったけれど、さっき思い切り血を吸ったせいか、もう飲みたくはならなかった。
その代わりに、身体中の火照りがいっそう強くなり、辛くてたまらない。
「アーウェン……欲しい……」
唇を離し、たまらずにハァハァと息を荒げて強請った。
「もっと、飲みたいんですか?」
噛み痕を指差され、ラクシュは首を横に振る。
「違う……こっち……」
食卓に押し倒されたまま、アーウェンの熱くなっている部分を、太腿で軽く擦った。
「ら、ラクシュさん……」
アーウェンが呻き、ラクシュは身体を下にずらして、そこへ自分の疼いてたまらない箇所を擦りつける。
黒い貫頭衣のローブはすっかりまくれ上がり、濡れた下着がアーウェンのズボンに擦れて、中から濡れた卑猥な音がする。
「あっ、あ、あっ、欲し……ちょうだい……っ!」
腰を揺らめかせるたび、こすれ合う部分から中途半端な快楽が駆け抜けて、目の奥で火花が散る。とろとろに蜜を零す秘所へ、しっかり埋め込むものが欲しくて、気が狂いそうだ。
「っ……俺も、ものすごく我慢してたんですから……っ!」
下着を引きちぎられた。そこに指を這わされ、ラクシュは悲鳴をあげる。
「んあああっ!」
位置を確かめるように弄られ、体内に節くれだった指が入ってきた。内部で蠢くたびに、ラクシュの身体がビクビクを引きつる。
「ラクシュさん……可愛い……」
気持ちよくなっているのはラクシュだけのはずなのに、アーウェンが恍惚に蕩けた顔をしている。
「あ、あ……アーウェン、きもちいい……でも……」
早く埋め込んで欲しくてたまらず、両手でアーウェンの顔を引き寄せて、顔中に口づけながら一生懸命に強請った。
「すき、アーウェン、すき……ほしい、アーウェンが、ほしい……」
「はぁ……ラクシュさん、俺も欲しい……」
衣服の擦れるような音がしたと思ったら、いきなり脚大きく開かされ、夢中でくねらせていた腰を、がっちり掴まれた。
「ああああああ!!!!」
熱い杭に串刺しにされ、ラクシュは背を仰け反らせて嬌声をあげる。アーウェンが荒い息を繰りかえし、すぐに揺さ振られる。
「あ、ああっ!」
「ごめん、止まんな……」
奥の窄まりを突かれ、目の前が白く光った。
「―――っ!!!!」
身体の外も中も、激しく痙攣する。
「あ、だめ、あ、ああ、あ……」
痙攣が治まらないうちに、また激しく内壁を擦られて、昇り詰めた。
涙で歪む視界の中、アーウェンが歯を喰いしばって、苦しそうな顔をしているのが見える。
「は……んん……アーウェ……きもちよく、なって……」
足を彼の腰に絡めてきゅっと締めると、アーウェンはいっそう苦しそうな顔で呻いた。
「あ、ラクシュさ……ん、そんなに、したら……」
腰を掴まれ、一番奥まで深く突きこまれた。アーウェンの白目部分が、狼特有の虹彩へと変わっていく。
「く、ああ……俺、ラクシュさんを……壊しそうで、怖い……」
凶暴な光りを目に帯びたアーウェンが、喉奥で唸り声をあげた。
「だいじょう……ぶ……わたし……キルラクルシュ……」
不死身と言われた、とても頑丈な吸血鬼だ。
「んっ」
唇を塞がれ、今度はアーウェンが食べるように、長めの舌で口内を貪られる。
「ラクシュさん、の方が良い……俺のラクシュさん……」
恍惚の声で囁かれ、ソクリとなにかが背骨を駆けた。さっきから激しく動悸している心臓が、いっそう早く脈打つ。
「ん……」
頷くと、嬉しそうなアーウェンのキラキラがまた増えて、自分にも移るような気がした。
眩しすぎて目を瞑り、もっと移ってくれれば良いのにと、その身体を抱きしめた。