思い出コレクター-2
文化祭が近付くと、練習や道具作りに熱が入り、下校時刻が遅くなる毎日。
いつしか一緒に帰るようになり、いつも僕らの帰路が分かれる公園で、
「また明日。がんばろうねっ!」
「うん。また明日」
少し髪が伸びた彼女は、相変わらず人なつっこい優しい笑顔で。
僕は、名残惜しさ混じりにうつむき小さく笑って。
そんな時間を重ねるうちに、僕らは互いの気持ちに気付いて、いつしか好きという言葉を打ち明けあった。
日暮れの早い冬の帰り道。いつも分かれる公園のベンチに座って、心もとない外灯を頼りに、僕らはお互いに生まれて初めてのキスを交わした。
抱き締めあった僕らは、寒さ以外のものに互いが震えてる事に小さく苦笑いしあい、千香は、
「ドキドキし過ぎて、どうしよう…」
俯いて、顔を手でパタパタと扇ぐ仕草で恥ずかしさをごまかしながら呟いた。
「僕だって…ヤバいんだけど…」
冬なのに、恥ずかしさのあまり、変な熱さで汗をかきそうになってた。
風に揺られた木から落ちた赤い葉が、ふと僕の肩に落ちた。
「今日の記念にとっとこ♪」
千香は、僕の肩から落ち葉を詰まんで、セーラー服の胸ポケットにしまった。
「たかが葉っぱなのに…」と小さく吹き出した僕の胸を軽く小突いて膨れっ面のふりをする。
そんな千香の頭を撫でられる事が、とても幸せで。
着られてるって笑われた制服姿も、いつしか当たり前に見えるようなり、入学の頃には低かった背も伸びて、千香を追い越し、歳の差を気にしない程に距離が近くなった気がして、凄く幸せだった。