終焉-1
サーっと
黒いモヤが晴れていく
目の前にいた影山は直立不動で立っていた。
「これは……どうゆう……」
「あ!」野太い声
突然後ろの男が大声を出しうろたえだした
「どこだ、ここ? なんでこんなんとこいるんだ……」
異様な雰囲気に混乱しているようだ
「あの〜混乱してるところ悪いんだが、この縄解いてくれないか?」
後手をクイッと上げて合図すると
「しらねー 俺、関係ねー」
と言いながら後ずさる。
「おい、逃げる前に外してくれよ」
男は「しらねー しらねー」と言いながら走って工場の出口に向かって走っていった。
「え? おい? お願いだ外してくれ!」
「しらねー」
出口近くにいた男も、逃げる男の後を追うように出て行く。
「わぁ」「きゃあ」「ごめんなさ〜い」
出口でぶつかったらしい
強そうなのは見た目だけだったようだ。
「やばい、ほどけない……」
もがいて前を見ると
直立不動の影山が立っている。
「どうなってんだこれ、僕は操っていないぞ」
「リモコンだよ」
美優の声だ。
「美優!」
「久しぶり親友さん」
「なんでここが分かったの?」
「そんなの、つけてきたからに決まっているでしょ」
「つけて来たって?」
「私もあの病院にいたのよ」
「あそこに居たんだ、怪我しなかったの?」
「え? フフ、私は操られないわよ」
「操られないって、なんで? それにリモコンって何?」
「ん? あれ? 硬いわね」
美優は縄をほどいている。
「美優、リモコンってこれのこと?」
持った信号機を見せると
「うん、それは旧チップでないと動かないのよね、あ、外れた」
解放された手首をさすりながら
「いたたた、血が戻ってきてジンジンする」
「押したのが赤いボタンで良かったわね、青いボタンだったらぶつかっていたわよ」
と少し嬉しそうな美優は絶世の美女だった。
「美優、助けてくれてありがとう」
「どういたしまして……」
「命令チップってリモコンもあるんだ?」
「うん、開発初期に作られた物だからね、手足を動かす事ぐらいしかできなわよ」
「美優はなんで命令チップの事を知ってるの?」
「それは…… 世の中広いのよ、幹夫でも知らない事だってあるのよね」
「どういう意味?」
「そんなことより、何でスイッチ使わないの?」
「え? スイッチ消えちゃったんだ」
「消えた? 消えるなんてありえないのに、何でだろう?」
「結構殴られたから、そのせいだと思うよ」
「振動で消えたと? ふーん 不思議だわ解明したい」
「恐ろしい事言うなよ」
「そういえば、その電池もたないから、早く彼を連れて行くよ」
「へ? どこに?」
「決まってるでしょ、第二研究所よ」
「えー! なんで知ってるの?」
「私は、物知りなんだ」
「これは物知りのレベルじゃないよ」
「いいから、青いボタン押しながら手首ひねって歩かせる」
「え? はぁ」
納得いかないけど、警察が来る前にここから離れた方がいい。
青いボタンを押すと影山がぎこちなく足を出した。
まるでロボットのように歩いてる。
「なんだこれ?」
「物理的な電波はそれが限界なのよ」
不自然な歩き方の影山を操作して、美優のあとをついていかせた。
慣れるまで時間がかかりそう。
外に出ると、赤いスポーツカーが停めてあり
助手席に影山を座らせて、僕は後部座席に行く
「狭い……」
「ごめんね、我慢して」
美優は爆音をならして工場を後にした。