同衾始末-2
それからしばらく2人は黙って向かい合っていた。
口を利いたのは琴音が最初だった。
「なんだか……2人ともいつもと違うので、勝手が違う感じじゃな」
「拙者としても琴音殿のそんな姿は初めてでまるで別人のような感じゆえ」
琴音は夫婦の契りについてどうしたら良いか迷っていた。
「私たちはやはり契りを結ばねばならないのでしょうか?」
「そうしなければ、無理矢理にも契らせると申されました」
「それこそ恥ずかしい。私たちでなんとかせねばなりませぬ」
すると松蔵は奥の間に立って行った。何事かと待っていると紙の束を手にして来た。
「こういう物は避けていたのだが、見なければ分からないこともある」
「枕絵……ですか? 私も初めてです」
一枚目を恐る恐る2人は覗き込む。そして衝撃を受ける。
琴音は怒った顔つきでそっぽを向く。顔は赤くなっている。
「こんな絵は変です。何か異様な……それにあそこを大きく描きすぎてます。
なにか不気味です」
松蔵は黙って絵を見ていたが、頷いた。
「琴音殿の言う通りです。女人のあそこは知らぬが、男の持ち物はこんなに大きくはない」
「女人だって……私は他の女人のことは知りませんが、そんなに大きくはありません」
「考えるにこれはその部分を説明する為に大きめに描いているのではないだろうか。」
「この人たちが特別に大きかったということではないのですね。
他のも見てみましょう」
「さよう。拙者は湯屋に何度も行って他の者の持ち物を見ているから間違いない。
こんなに大きければ歩きにくいことこの上ない。これでは着物を着ていても目だって仕方がないと思う」
「みんな大きめに描いてますね。」
「どれも女人の股間に男の物を刺し込んでいるようだが」
「どうしてこんなことをするのでしょう」
「きっと子種を女人の体内に植え付けているのだと思う。実際子種は白い糊のようなもので、出たことが何度もある」
「えっ、この絵のようにどなたか女人と交わったということですか」
「ち……違う。ひとりでに出たくなって出るのだ。出さないように我慢すると、寝ている間に出ることもある。」
「そうですか、それは女の『月のもの』と同じなのですね。毎月勝手に出てくるのですから。
私は聞いたことがあります。女の『月のもの』は子種を受け取らなかったお腹の中の卵が死んで流されたものだと」
「なるほどつまり男がここから子種を出し、女人のお腹の中の卵と合わさって1つになということか。」
「けれども何故皆このようにだらしなく裾を捲くっているのでしょう。このようなことを致せば着物が皺になったり、汚れたりはしまいか」
「きっとこれを描いたとき、寒い季節だったのであろう。であるから着物を脱いで裸になってしまえば、体を冷やすことになる」
「それならば今はそんな季節ではありませぬ。きちんと着物を脱ぎ畳んで肌襦袢だけになったほうが宜しいかと」
「そなたは肌襦袢姿を見られるのが恥ずかしくはないのか」
「それは松蔵殿も同じこと故、仕方のないことでござりまする。
では松蔵殿先に湯に入って来てくだされ」
「しからば、お先に御免」