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少女剣客琴音
【歴史物 官能小説】

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松蔵稽古-2

「降参か」
「ま……まだ、まだ」
「強がりを言うな。これから落すこともできる。もう一丁」
松蔵が手を離すと琴音は振り返りざま、急所を蹴り上げた。
「くぅぅぅ」
松蔵は屈み込むと苦痛に顔を歪めた。
「どうして琴音殿はそう攻撃的なのだ。拙者もきちんと説明しなかったから悪かったが、これは手首の鍛錬の為に行う推手(すいしゅ)の稽古なのだ」
「それを早く言ってくだされ」
「ちょっと道具を使うので、しばし待たれい」
松蔵は梯子を使って庭の木の枝に滑車を2個取り付けて縄を渡し、錘を1個ずつ付けてから縄の別の端を琴音に渡した。
「この錘は1貫(3,75kg)ある。
縄を手首に巻いて行って錘を上に上げるようにしてみよ。
その後で勢い良く縄を手首から外す。両手とも一度に行ってそれを繰り返すこと。
手首の力を強める為の稽古だが、ゆっくり行って筋を傷めないように」
琴音は早速始めた。両手が塞がっているから、手首の回転で握り拳や手首に縄を絡めて行く。錘を上に引っ張り上げながら巻いて行くのである。
そして錘が滑車の所まで上がったら、手首を逆に回転させて縄を解いて行く。
その際、錘の重みで勢い良く縄は解けて行く。手首も素早く回転させるのだ。
松蔵はその後また推手の練習をして手首を使った逆手の取り合いをした。
琴音の気性を知っているので、ときどき負けてやっていたが、そのことを口にするので余計に琴音は怒った。
「実は私も貴殿に対してときどきそうしてるのだ。兄弟子に花を持たせなければな」
そう言い返すのだ。
松蔵は琴音のことを一筋縄ではいかないと思った。
この稽古、手首だけの絡み合いが、だんだん腕全体の絡み合いにもなって行った。
そしてそれが胴体や足にまで延長することも。
「これをやっていて疑問になるのだが、松蔵殿、この稽古は本当に奥義の為に必要な稽古なのか? それとも兄弟子の好みでやっているのか?
これをやると矢鱈と体がくっつき合い絡み合う気がするのだが」
「確かにそうだが、本来なら手首だけで行うのが理想なのだ。だが手首が十分鍛えられていないから腕全体や胴や足まで絡めて衝撃を和らげてしまうのだ。
それをしているのは琴音殿なのですぞ」
「な……何を無礼な。私が好んで体を絡めていると言うのか。兄弟子といえども……」
「ほら、そう言いながらまた腕を絡めて手首を庇っているではないか」
「おのれ。そんなことはない!」
万事この調子で、琴音も松蔵と年が近いせいか、無角翁のときのように素直ではない。
だがなんとかこの稽古は無事に続いて行った。
 


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