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少女剣客琴音
【歴史物 官能小説】

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膂力稽古-2

稽古が進んでくると山道も少しずつ早足で進むようになり、その分振動が無角の股間に伝わった。
そうすれば自然現象が起きてくるのも当然である。
「師匠、近頃私の背中に固い物が当たるのですが」
「ああ、これか。亡き母君より賜りし形見で、お守りじゃよ」
「居心地が悪いので外してくれませんか?」
「外すことはできん。この場所につけるお守りだからじゃ」
「しかれどそれまではつけてなかったと心得ますが」
「いやつけていた。そなた……琴音殿が気にするようになっただけだ」
「そんな筈はありません。前は……あるにはあった気がしますが、こんなに固くて大きくはありませんでした」
「湿度や気温で変化するのじゃよ」
「その場所でなければいけませぬか。外せないのならせめて僅かでもずらしてください」
無角は手を入れて少しずらした。
「あまり変りない気が致します。仕方ありませぬ。我慢致します」
やがて琴音が全路程を走り抜けることができるようになった。
「琴音殿、そなたは米俵1俵を担ぐことができるか」
米俵1俵は16貫(60kg)である。当時成人男性の身長は非常に低かったが、1人前の男性なら米俵1俵は担げなければならないとされていた。
けれども女人で担げるのはかなりの力持ちと言わなければならない。
初めは頭の上に手ぬぐいを乗せて、その上に無角が米俵を乗せてやるようにした。
そうすれば少しふらついても頭に載せて歩くことができた。
それに慣れさせてから、米俵を自分で担ぎ上げる稽古を続けた。
腕の力ではなく足腰を使って担ぐということを徹底的に叩き込んだ。
それもできるようになったとき、初めて木刀を持つことが許された。
けれどもそれは通常の木刀の倍の太さのものだった。
「木刀に加わる力は腕の力だけではない。体全体の力じゃ。その木刀を振る時そのことを忘れると腕の筋を傷めてしまう。ゆっくり振りながら体で覚えるように」
そして無角は無角流なる剣の捌きを型にしたものを伝えた。それは最初のうちは舞いのように緩やかな動きのものであった。
型を一通り憶えると今度は緩急をつけ更に呼吸をつけてと言う風に発展していった。
2人は一緒にその型を練習した。無角は少しずつその動作を速めて行った。
琴音は無角に合わせて動いた。そして無角は通常の速さでやって見せ、琴音も同じ速さでついて来れるようにまでなった。
ある日無角は琴音に告げた。
「普通の木刀を持ってわしと試合するように」
木刀を手にしたとき琴音はその軽さに驚いた。ただ心に思っただけで木刀はその通りに動くかのようだった。
琴音が3度戦って1度だけ無角を負かしたとき、師匠は言った。
「これでわしの稽古は終わりじゃ。後は自分で修練するように」
そう言うと無角は6尺もある塀を跳び越えて屋敷から出て行った。門から出て追いかけたが琴音にはその姿を見つけることができなかった。
「師匠、何故突然いなくなるのですか」
琴音は姿の消えた無角に向かってそう言うと涙を流した。
琴音にとってはそれは愛しき男への女心というより、剣の師に対する思いであった。
佐野無角は齢100歳を越えるまで長生きしたというが、その一生は定まった宿を持たず知人や弟子の家を泊まり歩いその剣技を伝えたという。
これはその佐野無角と多田琴音の出会いのエピソードである。

  


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