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少女剣客琴音
【歴史物 官能小説】

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押しかけ試合-1

あの屈辱的な試合から半年が過ぎたが、多田家からはなんの抗議もなく、浅岡啓次郎の耳にも試合に敗れた噂は入って来なかった。
8人の道場生の仲間については手や足に怪我をしたものの、さほど重傷でもなく今では普通に道場通いをしていた。
「多田の家にはあの爺いが居座っていて剣を教えているようです。あれ以上腕を上げたらそれこそ嫁の貰い手もいなくなることでしょうな」
「我らのことを口を閉ざしているのはこちらが一方的に負傷者が多かったせいでしょう。それを襲われたと言っても信用されないでしょうから」
このように彼らは相変わらず無反省に毎日を過ごしていた。
そんなことを話しているうちに琴音が彼らの本拠地の桜庭道場に現れた。
啓次郎と例の8人が道場主の桜庭鵬山に呼び出されたのはその一刻ほど後だ。
「何故呼ばれたかわかるか? 半年ほど前、お前たちは浅岡に頼まれて実松道場の元師範代を襲ったであろう。たった今本人からそれを知らされた。
だが多田琴音殿はこのことを口外しないと約束してくれた。但し条件がある。
お前達8人と浅岡が多田殿と木刀で立ち会うことだ。一人ひとりではない。
9人と一遍に立ち会いたいと言っておられる。勝ち負けはとにかくそれをすれば遺恨はなく全てを水に流そうと言うのだ。
どうだ?受けるか」
9人とも即座に返事をした。これはチャンスとばかり大喜びだった。
道場主の鵬山も初めはこの申し出に驚いたが、自分の腕を過信する高慢ちきな女の思いあがりと思い、この機会に懲らしめてやろうと思ったのだった。
他の9人は勿論勢いで琴音が死ぬことがあっても、申し込んで来たのは本人であるから咎はないと考えた。
城下随一の大道場で弟子達が並ぶ中、9人は木刀を持って真中に立った。
浅岡啓次郎は試合の前に道場生の全員に聞こえるように言った。
「この試合は多田琴音殿が望んだものであることに間違いはないか」
「間違いない」
「では試合の結果どのような結果になっても双方遺恨を残さないということについては如何に」
「全くその通りと心得る」
「ではいざ」
「でやぁぁぁぁぁぁっ!!」
いきなり琴音は気合を発すると9人の中に突っ込んで行った。これは誰も予想していなかった。
小柄な琴音が床を蹴って飛び上がると身長が2倍にもなったほど高くなり、正面の男を大上段に打ち据えた。
男は木刀を持って受けたが、何故か木刀は弾かれ額を割られた。
「いやぁぁぁぁl」
荒れ狂う風のように走り抜けた琴音によって、3人の男が太刀合わせすることなく、小手と胴と横面をとられた。
「とぉぉぉっ、でやっ、だぁぁぁ」
どのようにやったのか分からないが続いて3人の木刀が弾き飛ばされ、その後鈍い音が立て続けに聞こえた。
その3人がそれぞれ木刀で打ち据えられたのである。
打たれた者は壁側に下がって座る。もう残りは2人だけになった。
そのうちの1人が浅岡啓次郎だが、鬼神のごとき琴音の動きに恐れをなして座り込んだ。
「参った。お許しを」
床に額をつけた啓次郎は震えていた。彼は琴音に殺されると思ったのだ。
琴音は木刀を下に下げて啓次郎に背を向けた。もう戦う気にはならなくなったと見えた。そのときもう1人の男が背後から大上段に構えて突進して行った。
振り返りざま琴音は受け太刀をしたが相手の木刀は天井に飛んで突き刺さった。
「参った」
残りの一人も鼻先に剣先を突きつけられて膝をついた。
道場の出口まで行くとそこで立ち止まった琴音は振り返って深く礼をし、そして姿を消した。
道場生たちはほんの短い間に起きた試合の様子を信じることができなくて誰も一言も漏らさなかった。
だが目録を取りながら試合もせずに降参した浅岡啓次郎のことを敬う気持ちなどその場にいた者たちには既になかった。

 


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