居候師匠-2
琴音は股を大きく開いて背負われるのは大きくなっては始めてであり、腰がひけそうになったが、無角は足をしっかりと引きつけたので大きく開いたまま股間が背に密着した。
無角の背骨の突起が琴音の恥骨の辺りにぶつかると痛いので骨盤を少ししゃくるように引くと今度は恥骨の下の柔らかい秘部に背骨が当たる。
それ故再び位置を直そうとすると無角がそれを許さずしっかりと固定した。
「あまり動かないようにしてもらおう。先ほど家の方角を尋ねたのだが……」
琴音は無角の頭の後ろに顔を隠して胸をつけぬように肩に掴まった。
「まっすぐ進めば白壁の塀が右手に見えて来る。そこが私の屋敷だ」
「もそっと体をつけてくれれば背負いやすいのだが」
「しかし貴殿は老人と言えども殿方で、女人の私が肌を合わせる訳にはいかぬ」
「お互いに着物を着ているではないか。肌を合わせるとはお互い裸の時に使う言葉じゃ」
「存じておる。ただ適当な言葉が思いつかなかっただけだ。とにかくこのままで」
「仕方ない。ではしっかり掴まっておれよ」
と言うと無角は琴音を背負ったまま走り出した。
まるで何も背負ってないが如く、全速力で走り出したのだ。
琴音は上体が反って振り落とされそうになるので、しっかりと抱きついた。
さすれば胸の膨らみが無角の背中に押し付けられる。
また走る時の振動が股間に響く。胸も股間も走る時の衝撃が伝わって来る。
「ご……ご老人……貴殿をなんとお呼びすれば」
「無角と」
「無角殿、なにか具合がおかしいのだ。走るのをやめて頂きたい」
「なんと。どのようにおかしいのか」
「どのようにと言っても、おかしいものはおかしいのだ。そんなに体を揺すらないで頂きたい」
「一刻も早くお宅にお届けしようとしているのだ。多少の不便は我慢して頂こう」
そう言って走り続ければ凸凹道の為揺れが激しくなる。無角もまた意識的に上下の揺れを作って走っていた。
そのうちに琴音の息は荒くなり、唇は半開きになって白い歯が零れて来る。薄目になった目は濡れたように光り、首の力が抜けて来た。
処女であっても鞘豆の部分は擦れば感じてくるもの、また乳首も十分に敏感な場所である。
それらの3点が集中的に責められれば、いかに剣客の琴音といえども女の持ち物は他と同じ感じぬ訳がない。
けれども武道一筋のためその道は全くのおぼこ。自分でもこの初めての感覚に驚いて戸惑うばかり。
しかし流石は師範代までつとめていた剣士。無角の尋常ならざる脚力に注目した。
そして甘く痺れるような感覚を払拭する為唇を噛んで意識を覚醒させた。
「無角殿、何故このように走ることができるのだ? 」
「修練の賜物と申しておこう」
「では、あの者たちの刀を弾いたのも、修練で得たものなのか?
それとも生まれつき膂力に優れていたものなのか」
「修練じゃ。そなたも修練すれば同じようにできる」
「そ……そうなのか。では、それをご教授願えないだろうか」
「それが人に物を頼む者の言うことか」
「あっ……それは」
「まず跪き、師と仰いでもらわねばならぬが、まあこういう状況故それは省くことにしよう。
ところで先ほどわしの住まいを聞いていたが、わしには定まった宿はない。もしわしに教えを請う積もりなら、そなたの家に泊めてくれ」
「し……承知した。ところで門の前に来たので下ろしてくれぬか。し……師匠」
無角は笑ってしゃがみ込むと琴音を地べたに下ろしてから右足首を掴んで膝に乗せた。
「師匠何をする積りじゃ?」
それには答えず無角が足首を軽く引っ張って廻すと『コキッ』と音がした。
「これで足首が嵌った。もう歩けるぞ」
「えっ?」
「自分の家に入るのに背負われたままでは恥ずかしいであろう」
「それはかたじけない。でも何故これを先にして下さらなかったのですか」
「ふむ……それはそなたを背負って走ってみたかったからじゃ」
「……師匠、貴殿はわからない人だ。ではとにかく中に」
「静かに歩くのだ。まだ関節が傷んでいるから湿布をせねばならぬ」
2人が中に入ると下人が盥に湯を入れて持って来た。
そこで無角は琴音に言った。
「ここで師弟の契りを結ぼうではないか。おいおい夫婦の契りではない。そんなに驚くな。一度だけわしの足をそなたが洗ってくれ。それが師弟の契りだ。それをすればその他の面倒な儀式はいらん」
「し……承知した。ではそこにかけて下され、師匠」
無角は草鞋を脱ぐと湯の中に足を入れた。すると向かい側に琴音がしゃがんで、無角の足を洗い始めた。
指の股に指を入れて一本一本丁寧に洗う様子に無角は目を細めた。
剣を握っているとはいえ、若い琴音の白魚のような指が己が足指の股を洗う。
無角はその指が己が股間を洗っているかのような気持ちに重なりうっとりとした。
すると股間がむくむくと高まり褌を押し上げて痛くなる。
位置を直したいが目の前に琴音がいるのでそれもできず甘い痛みに耐えている。
「琴音、その御仁はどなたじゃ?」
疑いと驚きの声で現れたのは、恰幅の良い年配の武士だ。琴音の父親多田監物である。
「父上、危うく狼藉者たちに襲われて一命を失うところを救っていただいた恩人です。無角さまと仰ります。剣技優れていて、教えを請おうと思ってお連れしました。」
すると監物は相好を崩して無角に頭を下げた。
「そうとは知らず……大変失礼致した。娘の命を助けて頂き誠にかたじけのうござる。どうぞごゆるりと当家に逗留して頂きたい」
そんな経緯で無角は多田家の屋敷に居候することとなった。